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人事労務・総務

労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや記載内容を解説!

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労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや記載内容を解説!
採用活動において、内定者が決定したら雇用側と労働者側が合意して雇用契約を結びます。お互いに合意するために重要なのが、労働条件通知書です。企業が労働者に明示することを義務付けられている労働条件通知書の概要と雇用契約との違い、記載すべき内容と記載の仕方について解説します。

労働条件通知書とは?

労働条件通知書とは?

労働条件通知書とは、労働基準法第15条の「労働条件の明示」や、労働契約法第4条などで定められている「労働契約の内容の理解の促進」を行うための書類です。この労働条件通知書にはどのような内容を記載しなければならないのでしょうか。労働条件通知書の役割と、出さなければならない対象となる労働者の分類を解説します。

労働条件通知書の概要

企業が労働者と初めて雇用契約を結ぶ際には、事前に労働条件通知書を発行しなければなりません。企業側が労働者に希望する労働条件として、契約期間や勤務時間帯、賃金、休日、解雇や退職に関する内容を文書で示します。

労働条件通知書の根拠となる法律は、労働契約法第4条の2で「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。」と定められています。労働基準法および労働契約法、パートタイム労働法、労働派遣法にも関連している書類です。

労働条件通知書の役割

労働条件通知書が発行されることで、労働者側は正確な情報を確認することができます。労働条件通知書があることで、その企業と雇用契約を結ぶかどうか、書面に示された情報を基に冷静に判断することもできるでしょう。

また、条件が明示されることで、雇用契約書を結ぶ前に労働条件通知書に示された労働条件の変更を交渉することも可能になります。

労働条件通知書の対象者は?

労働契約法第4条の2に「期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。」とあるように、労働条件通知書は、常用労働者だけを対象にするのではなく、以下のようなすべての労働者が対象となります。

参考:e-gov法令検索「平成十九年法律第百二十八号 労働契約法

・有期契約労働者
有期限契約労働者は、労働契約に雇用契約期間が定められていて、契約期間が満了すると労働契約も終了する労働者です。

・短時間労働者
短時間労働者は、同じ会社で働く常用労働者よりも、一週間の所定労働時間が短い労働者です。

・派遣労働者
派遣元の人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣先の指揮命令によって働くのが派遣労働者です。派遣労働者の場合は、労働条件通知書は派遣元が作成します。

労働条件通知書と雇用契約書の違いとは?

労働条件通知書と雇用契約書の違いとは?

  労働条件通知書 雇用契約書
適用される法律 ・労働基準法
・労働契約法
・パートタイム労働法
・労働者派遣法
・民法
書面締結の必要性 ・義務 ・文書化は任意
雇用者と労働者の合意 ・雇用者側からの交付 ・雇用者と労働者、双方での合意

労働条件通知書と混同されやすいものとして、雇用契約書があります。では、労働条件通知書と雇用契約書はどこが違うのでしょうか。

適用される法律の違い

労働条件通知書とは労働基準法や労働契約法などの労働関連法における、労働者に労働条件が明示されないことで労働者が不利益を得ないようにする、雇用者側の説明義務を果たすための書類です。労働関連法には、労働基準法、労働契約法、パートタイム労働法、労働派遣法などがあります。

民法623条では「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。」と定義されています。雇用契約は文書化されていなくても効力がありますが、雇用契約書を作り、雇用者と被雇用者の双方が確認して署名捺印をすることで、トラブルになった際などに効力を発します。

参考:e-gov法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」

書面締結の必要性の違い

雇用契約は口約束でも契約と捉えられ、文書化しなければならないという決まりはありません。しかし、労働条件通知書は、契約を結ぶ前の労働者に書面か電子データで渡すことが義務付けられています。労働条件通知書には、労働条件を説明する際に文書で明示しなければならない項目を掲載する必要があります。

雇用者と労働者の合意の違い

労働条件通知書は、雇用者側が労働条件を作成し労働者に確認してもらうための物なので、労働者の合意がない段階で作成しても問題はありません。ただし、労働条件通知書を確認した労働者側から条件について交渉されることもあり、双方の話し合いで労働条件通知書の内容が変わることも珍しくないのです。

雇用契約書は契約なので、雇用者側が一方的に内容を決めることはできません。労働条件通知書などで双方が合意した内容を記載して、署名捺印して雇用者と労働者それぞれが1部ずつ保管します。

トラブル防止のため雇用契約書の締結も

労働条件通知書には署名捺印の必要はありませんが、後になって「労働条件を説明されていない」「示された労働条件と違う」などという、雇用者と労働者のすれ違いがないとは言えません。

そのため、労働条件通知書と雇用契約書をまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」を作成しても構いません。労働条件通知書の内容を盛り込んだ雇用契約書があることで、署名捺印もあることから法的効力があり、トラブルに発展することを防ぐことができます。

労働条件通知書の記載内容と発行方法は?

労働条件通知書の記載内容と発行方法は?


労働条件通知書に記載しなければならない内容と記載した方がよい内容、発行する際の注意点などを紹介します。

記載内容

労働条件通知書に記載する内容は、必ず書面に記載して明示しなければならない「絶対的明示事項」と、口頭で伝えて明示してもよい「相対的明示事項」に分けられます。いずれも、具体的な時間や金額、手続きが分かるように記載することが求められています。

・絶対的明示事項
1.労働契約の期間(有期契約の場合は労働契約の更新基準についても明示)
2.従事する業務の内容と就業場所
3.始業時刻と終業時刻、休憩時間(交替制勤務の場合は就業時転換についても明示)
4.所定時間外労働の有無
5.休日、休暇
6.賃金の決定方法、計算方法、支払方法、賃金の締切りや支払時期、昇給
7.退職、解雇

・相対的明示事項
1.退職手当の決定方法、計算方法、支払方法、支払時期
2.賞与などの臨時に支払われる賃金の決定方法、計算方法、支払方法、支払時期
3.食費や作業用品などで、労働者が負担するもの
4.安全衛生、災害補償、業務外の傷病扶助、休職
5.職業訓練、表彰、制裁
6.休職に関する事項

・短時間労働者の場合に追加すべき明示事項
1.短時間労働者の場合は以下の4つも記載しなければなりません。
2.昇給の有無
3.退職手当の有無
4.賞与の有無
5.雇用改善などに関する相談窓口

発行方法

発行方法自体は簡単で、厚生労働省のひな型を利用して自社に必要な項目を記載し、印刷したものを従業員へ渡すだけです。ここではタイミングや注意点を解説します。

・発行するタイミング
労働条件通知書の交付日が雇い入れの初日となっている場合もありますが、労働条件通知書は雇用条件を労働者に確認してもらう目的であることを考えると、内定通知の時点で発行することが望ましいでしょう。労働条件通知書に明示すべき事項を記載していれば、内定通知と兼ねても問題ありません。

・記載・発行時の注意点
雇い入れる際だけでなく、有期限労働者の契約更新の場合にも労働条件通知書の発行が必要です。パートやアルバイトなどの短時間労働者の場合には、必要な追加項目が明示されているかどうかも確認します。

労働条件通知書は、電子メールやFAX、SNSでの交付も認められるようになりました。ただし、メールなどで交付する際には本文に直接入力するのではなく、書面として印刷できることが条件になっていますので、必ず労働条件通知書をファイルとして添付しなければなりません。

労働条件通知書の記入例を紹介

労働条件通知書の記入例を紹介


労働条件通知書の様式は特に定められてはいませんが、厚生労働省のホームページからも、雇用形態別に整理された様式をダウンロードすることができます。労働条件通知書を作成する際に、どのような書き方をすればよいのかについて解説します。

労働契約期間

記載例)期間の定めあり(2023年4月1日~2024年3月30日) 更新なし

労働契約期間は、労働条件通知書に必ず記載しなければならない項目です。雇用期間が限られている契約なのか、期間の定めがない契約なのかを明確にしなければなりません。雇用期間が限られている場合には、さらに契約更新が可能なのかどうかも記載します。
更新の条件がある場合には条件についても明示することが必要です。

業務内容

記載例)経理業務

業務内容には将来的な業務を含めて明示しても構わないとされていますが、雇用直後の業務内容を記載すると誤解が生じません。どのような種別の業務を行うのか分かる「経理業務」や「営業業務」などと記載します。

就業時間

記載例)始業9:00 終業18:00 休憩時間60分 所定時間外労働 無

就業時間は、始業と終業の時刻だけでなく、休憩時間も記載します。変則勤務の場合には変更労働時間制やフレックスタイム制があることを、時間外労働がある場合には、時間外手当がつくのか裁量労働制なのかを記載します。

就業場所

記載例)本社内

就業場所も、将来的な就業場所を含めて明示しても構わないとされていますが、雇用直後に実際に就業場所を記載すると誤解を生じません。転勤する可能性がある場合には、その勤務地も記載しておくとより親切です。

休日、休暇

記載例)休日 毎週土・日曜日 国民の祝日

休日については、曜日または日を特定して記載します。この際に、週1回または4週間で4回の法定休日を満たしているかどうかのチェックが必要です。

記載例)年次有給休暇 6か月以上勤務した場合 10日
休暇の欄については、有給休暇が取得できるかとその日数を記載します。6か月以上継続して勤務した労働者には年10日の有給休暇を与えなければなりません。

賃金

記載例)月給200,000円 通勤手当は距離に応じて支給 月末締め 翌10日払い

月給や賞与といった給与以外にも、時間外手当の割増賃金率や通勤手当、家族手当などの額を具体的に記載します。この際に、その地域の最低賃金を下回っていないかをチェックすることが必要です。賃金の締切日と支払日や、昇給制度があるかどうか、退職金の有無も記載します。

退職に関する事項

記載例)60歳定年制 継続雇用制度65歳まで 自己都合退職は14日前まで届け出が必要
退職に関しては、定年制度の有無とその年齢、再任用制度があるかどうか、希望退職の際に必要な手続きを記載します。

参考:厚生労働省「労働条件通知書 参考 記入例」

まとめ

労働条件通知書とは、企業が労働条件を労働者に明示し、労働者が労働契約の内容を理解するための書類です。すべての労働者が対象となっており、必ず書面に記載して明示しなければならない「絶対的明示事項」と、口頭で伝えて明示してもよい「相対的明示事項」があります。有期限労働者や短時間労働者には、さらに丁寧に説明しなければならない項目もありますので、担当者やその対象者となる人は覚えておきましょう。