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〈SAMURAI BLUEの礎を築くもの・前編〉サッカー日本代表を支える真のチーム力

サッカー日本代表を形作るのは選手や監督、コーチだけではない。多くのスタッフがそれぞれの専門分野を活かし支える。

スタッフがチームにもたらすチカラとはどのようなものか、日本代表として活躍した中村憲剛氏が語る。

※この記事は前編です。中編はコチラ
 後編はコチラ

Text:Takaomi Matsubara,Rie Tamura
Photograph:Keisuke Nakamura
タイトル写真:JFA

中村 憲剛(なかむら けんご)サッカー指導者・解説者
1980年、東京都出身。中央大学卒業。2003年の加入以降、現役生活18年のすべてを川崎フロンターレで過ごした。Jリーグベストイレブン8回選出、2016年には史上最年長にてJリーグMVP受賞。日本代表では、MFとして2010年W 杯南アフリカ大会出場、国際Aマッチ68試合出場、6得点。2020年に現役を引退。現在は育成年代への指導や解説活動などを通じて、サッカー界の発展に精力を注ぐ。

選手・スタッフが一丸となった
「チーム」のチカラ

何もストレスなく過ごせる
環境を作ってくれた

4年に一度の大舞台、FIFAワールドカップ(W杯)が開幕する。大会に臨む日本代表を構成するのは、選手や監督、コーチだけではない。数多くのスタッフが参加する。

「スタッフはまさに日本代表の財産と言っていいでしょうね」

そう語るのは、2010年W杯南アフリカ大会出場をはじめ、長く代表で活動し、現在はアンダーカテゴリーの日本代表や若い世代への普及活動などを担うロールモデルコーチとして活躍する中村憲剛氏である。

中村氏は06年、イビチャ・オシム監督のもとで日本代表に初招集された。

「メンバーリストを見ると、スタッフの数がものすごく多いんですね。とても大きな集団なんだなと感じました。用具をそろえるキットマネージャー、シェフ、フィジカルコーチ……さまざまな肩書と名前が連なっていたのを記憶しています」

日本代表でプレーを続ける中で、中村氏が感じたのは手厚いサポートだった。それをこう表現する。

「何もストレスがない。それくらい、もれがないというか、何があってもそれぞれの分野に応えてくれるエキスパートの方たちがいました。特に海外遠征に行った際も、困ったことがあったときには相談しに行くとすぐに応えてくれる。ピッチ外でストレスなく不自由なく過ごせるような環境作りを、スタッフの皆さんがしてくださった印象はすごくあります」

遠征時はトラブルも発生する。それでも不安になることはなかったという。

「部屋で電気がつかないとか、トイレが流れないということもありましたが、選手がホテルと直接やりとりすることはなかったですね。スタッフの方に言って何とかしてもらう」

選手の前では落ち着いたたたずまいを見せるスタッフたちの、万全の準備を整えるための裏側の苦労を垣間見ることもあった。

「価値観が違う国の方とコミュニケーションをとるので、日本での常識が通じないところは結構あったんだろうなと、電話で強めな口調のやりとりをしていたのを聞いたときに感じました」

日々、ストレスなく過ごしてきた。その中でも印象的な出来事がある。

「例えば、キットマネージャーの山根威信さんと麻生英雄さん。『スパイクの状態が』『ウエアがちょっと』と何かお願いすると、即座に新しいのを持ってきてくれて驚くほど対応が早かった。2人なんですが、4、5人いるんじゃないかというくらいてきぱきしていて、目が行き届いている感じでした」

監督によって合宿中などのスケジュールも異なってくる。それにもキットマネージャーが臨機応変に対応していたのも印象的だ。

「オシムさんのときは夜の練習を普通に行っていて、20時半とか21時に終わる。それから洗濯に行っていたと思うんですけど、深夜までかかるのは日常だったんじゃないでしょうか」

日本代表の海外遠征には、シェフとして西芳照氏が帯同する。

「いつも日本で食べている料理を海外でも食べられる。その安心感は大きかったですね」

実は、中村氏が初めて海外遠征に参加したとき、西氏は偶然帯同していなかった。

「『水は絶対飲むな。シャワーの水も口にするな』と言われるくらい衛生面に問題があるところで、生野菜なども食べられない。ホテルで出るのは今まで口にしたことのない料理で、お腹を悪くする選手もいたほどです」

衛生管理のみならず、日頃慣れ親しんだ食を摂れる意味の大きさを感じる。

「食をはじめピッチ外が充実していないと試合のパフォーマンスに直結します。特に西さんは『ライブクッキング』といって、ライブでパスタを作ったりお肉を焼いたりしてくれる。選手にとって楽しみのひとつでした」

「僕はそれぞれの背景や仕事を知りたいタイプなんです。皆別々のところから集まってくるので、知ることで近くなれるとも思っていました。西さんには選手の食べっぷりを尋ねたりしていました。よく食べているときはやっぱり調子が良かったりする。西さんは選手との関わりに蓄積があるから、遠征に行くたびに確認していて。一選手なのに『俺、誰なんだ』という感じですが(笑)」

スタッフが継承する
歴史と文化

「蓄積があるから」というように、スタッフの中には長く日本代表に携わっている人が多い。麻生氏は1998年のW杯初出場から今日まで、西氏もW杯でいえば06年から担ってきた。それこそ「日本代表の財産」だと言える。

「監督、テクニカルスタッフは替わるのが常ですし、選手も入れ替わっていくので、代表としての経験値は選手間はもちろんですが、ずっといるスタッフの人たちがつなげてくれる。歴史や文化を伝えてくれて、日本代表としての蓄積もどんどん増えていく。その蓄積で勝つこともあると僕は思います。本当に財産だと思っています」

そして中村氏は言う。

「サッカーって選手だけでやるものじゃないです。監督、コーチングスタッフ、ピッチ外のスタッフの皆さんが一緒になって戦っている。スタッフの皆さんの〝日本代表が良くなるために、勝つために〟という姿勢が、ひしひしと伝わってきました」

カタールでのW杯に挑む日本代表もまた、スタッフの支えとともにある。

2010年のW 杯南アフリカ大会、決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦での一コマ。
写真:澤田仁典/アフロ


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※掲載の情報は2022年11月1日現在のものとなります。


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