債権回収代行とは?弁護士との比較やメリット・注意点を解説
本記事では、債権回収代行の基本情報や、どのようなケースで依頼すべきかについて詳しく解説します。また、債権回収の方法や流れ、少額債権や個人債権への対応について取り上げ、最後には未回収を未然に防ぐ方法についてもご紹介します。
債権回収で悩んでいる方はぜひ最後までお読みいただき、最適な選択肢を見つけてください。


債権回収代行とは
売掛金の未回収がかさむと、どれだけ業績が良くても資金繰りに支障をきたす可能性があります。債権回収代行は、このような未回収債権の回収を専門家に任せることで、企業の財務健全性を守るサービスです。
以下では、債権回収代行の基本的な仕組みと特徴について解説します。
概要と基本情報
債権回収代行は、債権者に代わって貸付金などの金銭債権の回収業務を行うサービスです。代行業者が債権者に代わって債務者との窓口となって回収を行う方法と、債権を買い取って新たな債権者として回収する方法があります。
企業のお金に関する重要な業務であるため、債権回収代行を行えるのは法律で認められた事業者のみです。また、回収方法も法令に従って適切に行われる必要があります。
サービサーについて
サービサー法は正式名称を「債権管理回収業に関する特別措置法」といい、従来は弁護士にしか認められていなかった債権管理回収業を、法務大臣による許可制のもと民間会社でも行えるようにした法律です。
同法では、不良債権処理を促進するため民間サービサーの創設を定める一方で、反社会的勢力の参入を排除し、債権回収過程の適正を確保することを目的としています。許可を受けた業者に対して必要な規制・監督を行うことで、安全な債権回収の仕組みを整えています。
どのようなケースで債権回収代行業者に依頼すべきか

債権回収は企業経営において重要な業務ですが、状況によっては自社での回収が困難なケースがあります。以下のような場合には、債権回収代行の利用を検討する必要があるでしょう。
● 自社で債権回収できない場合
● 債権回収のノウハウが不足している場合
● 債務者とのトラブルを避けたい場合
以降では、それぞれのケースについて解説します。
自社で債権回収できない場合
取引先の支払い能力が認められない場合、電話や請求書による通常の督促だけでは債権回収が非常に困難です。このようなケースでは、債権回収の専門家に依頼することで、確実に未回収分を資産化して回収することが可能となります。
特に取引先の対応が悪質で支払う意思が見られない場合は、法的なアクションを起こせる業者への委託が効果的です。自社に対しては悪質な対応をする取引先でも、法律を熟知した専門家を相手にすると態度が変わることも少なくありません。
また、業務多忙で債権回収に十分な時間を割けない場合も、専門家に任せることで本業に集中できるメリットがあります。
債権回収のノウハウが不足している場合
自社で債権回収を行うメリットは費用を抑えられることですが、ノウハウがないために無駄な調査や手続きが重なり、かえって必要以上の費用がかかってしまうリスクがあります。
BtoBでの債権回収は特に債権金額が高額となるケースが多く、回収に失敗すれば連鎖倒産のリスクさえ生じかねません。また、何からどう手をつけていいのか、どのような言い回しが失礼にあたらずスムーズな回収につながるのかなど、専門的な知識がないと時間だけかかって効果が上がらない可能性があります。
そのため、リスクヘッジとして自社での回収を避け、専門家へ債権回収を委託することも有効な選択肢となります。
債務者とのトラブルを避けたい場合
取引先が債務者となっている場合、強引な回収を行うとトラブルになり、今後の取引に悪影響を及ぼす恐れがあります。また、債権回収が原因で相手方から悪質な対応を受ける可能性もあります。
債権回収代行業者は法令を遵守しながら回収業務を行うため、決して強引な取り立てや執拗な請求電話などは行いません。極力両者に大きないざこざが起きないような解決を見据え、返済・支払いのための提案も行ってくれます。このような専門家を間に入れることで、取引関係を維持しながら適切な回収が可能となります。
債権回収代行を依頼できる業者
債権回収の代行を依頼できる業者には主に以下の3種類があります。それぞれ特徴や対応できる債権の種類が異なるため、状況に応じて適切な業者を選択することが重要です。
● 債権回収代行会社
● ファクタリング会社
● 弁護士
それぞれの特徴と役割について解説します。
債権回収代行会社
債権回収代行会社は、法務大臣から特別な許可を受けて債権回収を行う専門会社です。「サービサー」とも呼ばれ、金融機関等からの委託による回収や債権の譲り受けによる回収を行います。
取り扱える債権は「特定金銭債権」に限定されており、主に以下のようなものが対象となります。
● 金融機関等が有する貸付債権
● リース・クレジット債権
● 資産の流動化に関する金銭債権
● ファクタリング業者が有する金銭債権
● 倒産手続き中の者が有する金銭債権
● 保証契約に基づく債権
● その他政令で定める債権
債権回収会社に依頼する場合、「債権を買い取ってもらう」形になるため、費用倒れになる心配がありません。ただし、債権の買取価格は実際の債権価格より低く設定されることが通例です。
ファクタリング会社
ファクタリング会社は、売掛債権を買い取ることで資金調達をサポートする会社です。主に金融機関が運営しており、事業者が持つ売掛金を支払期日前に買い取ることで、早期の資金化を実現します。
依頼時は「債権を買い取ってもらう」形となり、債権回収会社と同様に未回収分を確実に資産化できます。主な対応債権は売掛金で、一般的に債権額の10~20%程度の手数料が発生します。
また、売却時には債権の譲受人であるファクタリング会社が債務者への回収対応を行うために必要な手続きの費用も負担する必要があります。事前に取引先との契約で債権譲渡が禁止されていないか確認することも重要です。
【関連記事】ファクタリングとは?2社間・3社間の違いを図解でわかりやすく解説
弁護士
弁護士は債権回収に関する幅広い業務を行うことができます。特定金銭債権はもちろん、事業者の売掛金や個人の貸金、損害賠償金など、さまざまな債権の回収に対応可能です。
弁護士名義での書類通知や債務者との交渉代理、裁判書類の準備、出廷代理などを依頼でき、対応にかかる手間や時間を大幅に削減できます。さらに、問題解決に向けた回収方法の提案など、依頼状況や債権の種類に応じたサポートも期待できます。
ただし、弁護士の場合は着手金や成功報酬金などの費用が発生し、債権の買取は行いません。対応内容によって費用は異なり、場合によっては費用倒れになる可能性もある点に注意が必要です。
債権回収代行会社に依頼するメリット

債権回収代行会社への委託や債権譲渡には、以下のようなさまざまなメリットがあります。
● 違法な回収を避けられる
● 回収の負担を減らせる
● 回収の可能性が高まる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
違法な回収を避けられる
債権回収代行会社は、法令を遵守しながら回収業務を行います。債権回収会社として法務大臣から許可を受けるためには、資本金5億円以上の株式会社であることや取締役に弁護士を選任することなど、厳格な基準を満たす必要があります。
専門的な法的知識と実績を持つ業者が適切な手続きで回収を行うため、違法な取り立てによるトラブルを避けることができます。債務者との間で発生しがちな問題を未然に防ぎ、合法的な範囲で確実な回収を進めることが可能です。
回収の負担を減らせる
債権回収には多大な時間と労力を要します。債務者との対応や交渉、書類作成など、さまざまな業務が発生するためです。これらの業務を専門家に任せることで、企業は本業に集中することができます。
また、債権回収代行会社が債務者との窓口となることで、債権者は直接的な対応に伴う精神的負担から解放されます。取引先との関係維持に気を遣いながらの回収業務というストレスフルな状況を避けられる点も大きなメリットです。
回収の可能性が高まる
債権回収代行会社に依頼するデメリット
債権回収代行会社の債権買取価格は、債務者の状況に応じて債権価格よりも大幅に低く設定されることが通例です。そのため、自社で回収業務を行った場合と比べて損失を計上することになる可能性があります。
債権回収の委託時には金額に応じた手数料を支払う必要があります。ファクタリングの場合は一般的に債権額の10~20%程度の手数料が発生し、弁護士に依頼する場合は着手金や成功報酬などの費用が必要です。
また、手続きに関する費用も債権者負担となります。ファクタリング会社が債務者へ回収対応を行うために必要な手続きの費用なども支払わなければなりません。
取引先との関係維持の観点からも注意が必要です。債権回収代行業者を利用することで、強制執行等の法的措置に発展した場合には取引関係に影響を及ぼす可能性があります。
債権回収代行を利用する際は、これらの費用と回収可能額を比較検討し、費用対効果を慎重に判断することが重要です。自社の状況や債権の性質に応じて、最適な回収方法を選択する必要があります。回収できない場合は手数料分が損失として増えてしまうリスクもあるため、慎重な検討が求められます。
債権回収代行業者に依頼する場合と弁護士に依頼する場合の比較
債権回収代行業者と弁護士では、取り扱える債権の種類や対応できる業務範囲に大きな違いがあります。債権回収会社が特定金銭債権以外の債権を取り扱えるよう承認を受けることは可能ですが、法律事務所で行える業務の範囲を超えることはできません。
一方、弁護士は対象債権を特定金銭債権に限定されることなく、幅広い範囲での債権回収が可能です。また、債権回収会社の依頼は基本的に金融関係の企業に限られますが、弁護士は個人・企業を問わず債権回収を相談・依頼することができます。
さらに重要な違いとして、弁護士以外の無資格者や認可を受けていない業者が業務として意見したり代理したりすると、弁護士法違反で逮捕される可能性があります。万が一、債権回収代行会社を装って債権回収を行う悪質な業者に依頼してしまった場合、依頼した側も共犯としてみなされるリスクがあります。
安全確実な回収を望む場合は、弁護士に依頼することでこれらのリスクを回避できます。弁護士であれば、法的手続きを含む事案に応じた適切な方法で回収を進めることが可能です。ただし、弁護士は債権の買取は行わず、あくまでも回収の代理人として対応するという点には注意が必要です。
債権回収の方法・流れ

債権回収代行では、ケースに応じて段階的に取り立ての方法が選択されます。
基本的な流れとしては以下の4段階があります。
● 債務者との交渉
● 催告書の送付
● 支払督促・訴訟手続き
● 強制執行の実施
それぞれの段階について、解説します。
債務者との交渉
最初の段階として、債務者に対して断続的に電話・書面による催促を行います。物理的な距離を克服でき、通話料・請求書発行分のみのコストで済むため、最も手軽な回収方法です。
債務者から「一括では返せない」といった申し出があった場合は、分割払いの条件交渉が始まります。しかし、単純に分割払いを承諾するだけでは、債権回収の観点から大きなデメリットを負うことになります。
そのため、分割払いに応じる代わりに担保を取るなどの対応が必要です。担保には、連帯保証人や物的担保の2種類があります。保証人は必ず連帯保証契約とし、物的担保としては不動産や商品、重機などの動産が対象となります。
催告書の送付
債務者に対して、支払いを求める内容を記載した催告書を内容証明郵便で通知します。内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に宛てて差し出したかを日本郵便が証明するサービスです。
この通知自体に支払いを強制する効力はありませんが、訴訟に発展した場合の客観的な証拠として活用できます。また、債務者に対して心理的なプレッシャーを与える効果もあります。ただし、1通の発送に1,300円程度の費用がかかるため、コストパフォーマンスを考慮する必要があります。
支払督促・訴訟手続き
内容証明郵便を送付しても反応がない場合、支払督促の申立てを行います。支払督促は、債権者の申立てにより、簡易裁判所の書記官が債務者の言い分を聞くことなく支払いを命じる手続きです。
金銭の支払いを求める場合は金額にかかわらず利用でき、貸金・立替金、売買代金、給料・報酬、請負代金・修理代金、家賃・地代、敷金・保証金などが対象となります。
支払督促は書類審査のみで行われるため、申立人が裁判所へ出向いたり、詳細な証拠を集めて提出したりする必要はありません。また、手数料は通常の訴訟の半額で済みます。ただし、債務者から異議申立てがあった場合は訴訟手続きへ移行します。
強制執行の実施
債務者が支払いに応じず、異議申立ても行わない場合は、支払督促に対する仮執行宣言を得て強制執行を申し立てることができます。強制執行は相手の意に反して強制的に行う手続きです。
強制執行には主に不動産執行、動産執行、債権執行の3種類があります。不動産執行では事前調査のための高額な予納金が必要で、動産執行では差し押さえの際に直接相手方へ出向く必要があります。また、債権執行では第三債務者からの取り立ても必要になります。
強制執行を申し立てる際は、債務者の資産状況に合わせて、どの財産を差し押さえるかをしっかり検討することが重要です。
債権回収代行業者は少額・個人の債権回収も可能か
債権回収代行を検討する際、「金額が少額すぎないか」「個人の債権でも依頼できるのか」という疑問を持つ方も多いでしょう。これらの債権回収も可能ですが、いくつか考慮すべき点があります。
少額債権の回収について
少額債権でも債権回収代行を委託することは可能です。しかし、手数料や報酬などの費用が回収額を上回ってしまう可能性があるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。
特に弁護士に依頼する場合、着手金や成功報酬などの弁護士費用が発生します。債権額があまりに少額の場合、費用倒れとなるリスクがあります。また、債権回収会社の場合も手数料が発生しますので、少額債権の回収については自社対応を検討することも選択肢の一つです。
支払督促の手続きを利用すれば、債権者が簡易裁判所へ申し立てを行うことで、比較的簡単に法的な回収手段を取ることができます。一般的な訴訟の半額程度の手数料で済むため、少額債権の回収に適しています。
個人債権の回収について
債権回収会社は特定の事業者である場合などを除き、一般的な個人の債権は取り扱えません。しかし、弁護士であれば個人間の貸付金や未払い金などの債権回収も依頼することが可能です。
個人の債権回収は感情的なトラブルに発展しやすいため、第三者である弁護士を介することで冷静な対応が期待できます。また、弁護士は訴訟や支払督促など法的手続きに詳しいため、確実な回収が見込めます。
ただし、個人からの債権回収の場合も手数料や報酬は発生します。少額の個人債権については、費用と回収可能性を考慮した上で、自己対応と代行依頼のどちらが適切か判断する必要があります。
債権回収代行サービスを利用する際の注意点

債権回収代行サービスは有効な解決手段ですが、利用にあたってはいくつかの重要な注意点があります。特に「回収の成功率」と「業者の信頼性」は慎重に確認する必要があります。
債権回収に失敗する場合がある
債権回収代行に依頼したからといって、確実に回収できるわけではありません。債務者の支払い能力や財産状況によっては、専門家が対応しても回収が困難なケースがあります。
弁護士に依頼する場合、着手金や成功報酬金などの費用が発生します。さらに、当初予定になかった手続きが必要となれば、オプション料金の支払いが必要になることもあります。対応内容によって費用は異なり、場合によっては費用倒れになるリスクも考えられます。
ファクタリング会社への依頼でも、一般的に債権額の10~20%程度の手数料が発生します。加えて、回収対応に必要な手続きの費用も負担する必要があります。回収できない場合は手数料分が損失として増えてしまうため、事前に十分な検討が必要です。
詐欺業者や悪徳業者に注意
債権回収会社を名乗り、インターネットのアダルト請求や身に覚えのない売買代金を請求してくる詐欺業者が存在します。また、回収できもしないのに回収業と偽って委託費用を請求する悪質な業者もいます。
債権回収会社への委託にあたっては、法務大臣が許可した正規の会社かどうかを必ず確認する必要があります。法務省のホームページでは、営業許可を受けた債権回収業者の一覧を確認できます。
正規の債権回収会社の名前を騙って営業する詐欺業者もいるため、最終的には電話番号や所在地が正規の債権回収会社のものであるかを確認することが重要です。安易に依頼してしまうとトラブルに巻き込まれる恐れがあるため、慎重な業者選びが求められます。
参考:法務省┃債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧
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