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法人ができる節税対策を徹底解説!意味のない節税には注意
節税に関する基本知識
節税対策の具体的な手法に入っていく前に、まずは節税に関する基本知識を身に付けましょう。「損金」がキーワードとなるため、損金に注目して読んでいただければと思います。
損金とは?
損金とは税金上の費用のことです。法人税上の利益は、税金上の収入である益金から損金を差し引いて計算されます。損金の金額が大きければ大きいほど、法人税上の利益が少なくなり、納税すべき税金も減少します。
どんなものが損金となる?
損金は主に会計上の費用に計上されているものです。例えば、広告宣伝費・旅費交通費・通信費・水道光熱費・地代家賃・外注費・事務用品費・雑費などが挙げられます。
一方で、中には会計上の費用と損金が一致しないものもあるため注意が必要です。例えば、役員報酬・賞与、寄付金、引当金などが挙げられます。また、費用のうち、ある限度額までなら損金として認められるといったものもあり、代表的な項目として交際費などがあります。
節税と脱税の違い
節税とは、税法のルール上認められた行為をすることにより、税金を安くすることです。脱税とは、ルール上認められていない行為により、意図的に税金を納めなかったり、安くしたりすることを指します。節税と脱税はルールに従っているか否かにより、大きく異なります。
節税は、例えば利益が出ているため、社用車を購入し法人税法上のルールに従い減価償却費を損金計上していることなどの行為が該当します。ルールに従って損金を計算しているため、合法的です。
脱税は、架空の費用計上のために領収書を偽造したり、本来は申告書を出すべきであるところを出さなかったりする行為が挙げられます。節税とは異なり、ルールや法令に逸脱した行為であり、罰則の対象にもなります。
意味のない節税とは?
節税の本来の意味は、「税金を合理的な手法により安くすることで、会社に残しておけるキャッシュを増やすこと」です。損金を大きく計上するために無駄なお金を使い、結果として、会社のキャッシュが少なくなるようなことがあっては節税をする意味がありません。
例えば、決算期が近いからといって、ビジネス上効果のない接待交際を繰り返したり、損金に落とせる高額な消耗品を購入したりしてしまっては、本末転倒です。節税をする際は、最終的に自社のキャッシュが増加するか、支出の効果があるのかを慎重に検討したうえで、意味のある節税をしなければなりません。
具体的な節税方法8選
節税に関する基礎知識を押さえた後は、具体的な節税方法について見ていきましょう。会社の状況によって効果に差が出る点は留意が必要です。
1.広告宣伝費
広告宣伝費は、費用計上した期に一括して損金に計上することができます。例えば、3月末決算の会社で、現在は3月20日だとしましょう。通常、ここから大きな節税をすることは難しいケースが多いですが、広告宣伝費を大きくかけることにより多額の損金計上させることが可能です。
看板やテレビCM、チラシなど出稿まで時間がかかる広告宣伝費は、決算期末までの残り時間が少ないと実現は難しいかもしれません。しかし、Google広告やYahoo広告などのオンライン広告であれば、アカウントさえ持っていれば、広告出稿まで手短に実行することができます。
広告宣伝費による投資とリターンが見合っていれば、効果的な節税方法といえるでしょう。
2.接待交際費
接待交際費も支出をするだけで損金計上されるため、便利な手法といえます。しかし、接待交際費の損金算入できる金額には、限度額があることは必ず覚えておきましょう。
接待交際費の損金算入限度額は資本金が1億円以下の会社か、1億円超の会社によって異なります。
1.資本金が1億円以下の会社の場合
以下のどちらかの計算方法を選択可能
・年間800万円以下の接待交際費を全額損金算入
・接待交際費の中でも接待飲食費×50%の金額を損金算入
2.資本金が1億円超の会社の場合
・接待交際費の中でも接待飲食費×50%の金額を損金算入
資本金が1億円以下の会社の場合、2通りの計算方法が用意されているため、損金算入金額が大きくなる方を選択するとよいでしょう。また、従業員の慰安のために使用される費用や少額の飲食費(1人あたり金額が5,000円以下)は接待交際費に含まれない点には留意が必要です。
3.保険商品
中小企業等においては経営者の死亡や病気は事業上のリスクとなるため、生命保険等について、支払時に全額損金とされることが認められています。中途解約時に返戻金を受け取れる商品内容である場合、返戻金を受け取るタイミングと大きな損金を出すタイミングの一致を図ることで、大きな節税効果を得られる可能性があります。
一方、2019年に節約保険に関する大きな改正が入りました。中途解約時の返戻率に基づき支払保険料の損金の参入割合を変化させるルール改正です。簡潔に変更内容をまとめると以下のとおりです。
・返戻率が50%以下の場合、支払保険料の全額損金算入
・返戻率が50%超70%以下の場合、支払保険料の60%が損金算入
・返戻率が70%超85%以下の場合、支払保険料の40%が損金算入
・返戻率が85%超の場合、支払保険料×ピーク時返戻率×90%が資産計上、残りを損金算入
節税をうたった保険商品はさまざまなタイプのものがありますが、どのような節税効果があるのかはルール改正後の影響を鑑み、事前に慎重な検討が必要です。
4.貸倒処理
売掛債権が未回収の場合、未回収の事実だけでは貸倒処理できず損金算入することはできません。貸倒処理ができる場合は、以下の3つの事実が生じた場合です。
1.金銭債権が切り捨てられた場合
会社更生法や更生手続き、任意整理などにより債権の一部または全額がカットされた場合、そのカットされた金額を損金算入することができます。
2.金銭債権の全額が回収不能となった場合
債務者の資産状況や支払能力等からその「全額」が回収できなかったことが明らかになった場合、その事業年度に損金算入することができます。「全額」の回収不可が条件となっているため、「一部」回収できる場合は、②のルールを適用することはできません。
また、具体的にどのような時に金銭債権の全額が回収不能と判断されるかについて、最高裁判所の判例では、債権者側の事業も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されることになっています。
3.一定期間取引停止後弁済がない場合等
支払能力が低下した債務者との取引を停止してから1年以上の経過、または売掛債権総額が取立費用より少なく支払いを催促しても弁済がない場合には、債権価格から備忘価額1円を控除した金額を損金算入することができます。
5.金融商品
法人で余ったキャッシュで株式や債券などを運用している場合、含み損があるケースに限り節税することが可能です。益金が大きく出そうな事業年度に、含み損のある株式等を売却することで損金計上し、益金と相殺することで節税できます。
含み損の株式を保有しているだけでは損金計上することはできず、損失の実現が条件である点は留意しておきましょう。
6.旅費交通費
旅費交通費は全額損金算入することができます。地方や海外に取引先がある場合は、電車代・航空運賃・ホテル代、現地の食事代など多くのお金が必要ですが、損金計上することで節税につなげることが可能です。
ただし、単なる家族旅行などは事業に関係ないため会社の損金に計上することはできません。あくまでも事業上の目的に照らして妥当な旅費交通費のみを損金算入することができます。
7.決算賞与
決算賞与とは、決算の前後に臨時で支給される賞与のことです。夏や冬のボーナスとは異なり、支給があるかどうかは決まっていない点が特徴です。
決算が近くになり、このままでは法人税を多額に支払うことが分かっている場合、税金を支払うよりは従業員の頑張りに答えたいといったときによく使われる手法です。決算賞与によって、節税効果と従業員のモチベーションを上げられることがメリットです。
ただし、最終的に手元に残るキャッシュは決算賞与を払った場合、そうでない場合に比べて少なくなる点は注意しておこう。また、一度決算賞与を支払うと、来年の決算賞与を従業員が期待するため、来年以降も継続して支払わなければ従業員が辞めてしまう可能性もあります。従業員のモチベーションと節税効果、会社に残るキャッシュを考えて実行する必要があるでしょう。
8.M&A
通常の株式譲渡による買収だと、株式の取得のみで損金計上されることはないため、M&Aによる節税効果はありません。その一方で、営業譲渡(事業譲渡)によるM&Aは、「のれん」が計上される場合においてのれん償却費を損金算入することができるため、節税メリットが生じます。
ただし、営業譲渡の場合、消費税がかかることや事業移転に個別の同意が必要であることなどのデメリットもあります。そのため、一概に株式譲渡よりも営業譲渡の方がよいわけではないことには、注意が必要です。
ルールに沿った正しい節税を心がけよう
今回は、法人ができる節税対策にスポットを当て、節税に関する基本的な知識と具体的な節税アクションについて解説してきました。
節税はすればするほどよいというわけではなく、会社の資金繰りと支出の効果を見極め、効果の高いものを選択しなければならありません。ただ税金を払いたくないだけで、不必要のない消費を繰り返してしまうことは、節税ではなく、ただの浪費です。
また、交際費など損金算入できる金額に限度額がある場合や、貸倒処理など損金算入できる条件が定められている場合もあります。税務のルールを正しく認識し、ルールに沿った正しい節税を心がけるようにしましょう。