減価償却とは?メリット・デメリットや対象資産について
この記事を読んでわかること
・減価償却は基本的には耐用年数に応じて、計算をするが特例もある
・中古資産であっても減価償却として処理ができる
減価償却の基本情報
減価償却とは、資産を取得した時にかかった費用の全額をその年の費用にするのではなく、定められた耐用年数に応じて、按分してその年の費用に計上をする時に使う勘定科目のことをいいます。
資産であってもそもそも減価償却として処理をするかどうかは基準があります。どういった資産を購入した場合に減価償却の処理が必要になるのか、またどのように減価償却の計算を行うのかを簡単に解説します。
減価償却とは?
減価償却とは、資産の価値は時間の経過とともに減少していくという考え方を指します。そのため、資産を購入した時には購入した年にまとめて費用にするのではなく、経年劣化していく資産に合わせて、少しずつ資産価値を減少させ、減少させた分をその年の費用として計上していきます。
資産によって定められた耐用年数があるため、耐用年数に応じてその年に費用する金額を計算します。
減価償却を用いる理由
なぜ資産を購入した時には減価償却での処理が必要なのでしょうか。例えば仕事で使用するパソコン1台を買い替えた場合はその年の費用に計上したとしても、それで事業が赤字に転じてしまうことはないでしょう。
しかし新しく工場を建設して設備投資をした場合はどうなるでしょうか。設備投資したその年にまとめて費用を計上してしまうとたちまち事業は赤字になってしまいます。
もし事業が赤字になってしまった場合には金融機関からの融資を受けられなくなったり、打ち切られてしまったりする恐れがあります。
減却償却を理解するために知っておきたい用語
減価償却の処理をするうえで覚えておきたい用語がいくつかあります。用語の意味を理解することで減価償却の理解も深めましょう。
・減価償却資産
減価償却資産は減価償却の対象となる資産のことをいいます。減価償却資産の対象となる資産の具体例はのちほど解説します。
・減価償却費
減価償却費は決算のときに減価償却して経費に計上する費用のことをいいます。減価償却資産の取得にかかった費用を各年分に按分して必要経費にしていく際に用いる勘定科目です。
・取得価額
減価償却資産購入にかかった金額をいいます。取得価額が減価償却費の計算を行う時の基準になります。
・耐用年数
耐用年数は税法で定められている資産の使用可能期間です。減価償却費の計算において何年で費用に落とすのかは耐用年数が基準になります。
・事業供用日
事業供用日は減価償却資産を使い始めた日を指します。購入時期と実際に使い始めた時期が異なるケースがあります。
・減価償却累計額
減価償却した今までの合計額を減価償却累計額といいます。
・未償却残高
取得価額から減価償却累計額を差し引いた残高を未償却残高といいます。未償却残高がなくなったら資産の価値がなくなったとして費用の計上も終わりになります。
減価償却の対象資産について
それでは減価償却の対象となる資産にはどういったものがあるのでしょうか。対象となる資産や減価償却する資産であるかどうかの判断基準について具体的にみていきます。
減価償却対象の資産
減価償却資産の対象となるものは、業務で実際に使用している資産、かつ時間が経過するにつれて価値が劣化する資産です。また資産であっても1個当たりの金額が10万円を超えない場合には、減価償却資産の対象にはなりません。10万円を超えない資産に関しては消耗品として費用の計上をします。
形ある資産であれば有形固定資産とし、形ない資産であれば無形固定資産として処理をします。
有形固定資産の例としては、建物や建物付属設備、機械装置や車両等があります。無形固定資産の例としては、ソフトウェアや特許権、商標権、意匠権といった権利等があります。
減価償却対象外の資産
減価償却資産の対象外になる資産は、業務に使っていない資産や時間が経過しても価値が変わらない資産です。事業に使用しない建物や車両を購入した時にはそもそも会計処理の必要性がないため、減価償却する必要がありません。
資産であっても時間が経過しても経年劣化しないものもあります。具体的には土地がそうです。土地の場合、資産価値は変わりますが時間が経過したからといって劣化するものではありません。
また土地の権利である借地権も時間が経過しても権利に対しての価値は低下しないため、無形固定資産として償却する必要はありません。書画や骨董品等の歴史的価値があるものも劣化して価値が下がる資産とはなりません。
また稼働休止をしている間の資産も減価償却することはできません。稼働休止しているということは業務に使用しているとはいえないからです。稼働再開した時に減価償却の処理も再開することになります。
中小企業者等の特例について
減価償却には中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例と呼ばれるものがあります。
これは中小企業や個人事業主で青色申告等の一定要件を満たす場合に使える特例です。減価償却資産の取得額が10万円以上30万円未満であれば、購入をしたその年にまとめて必要経費の計上ができる特例です。
ただしこの特例は2024年3月末までに取得したものが対象であり期限付きの特例である点に注意しましょう。もちろん税制改正などによって今後も延長になる可能性もあります。
減価償却を用いるメリットやデメリット
減価償却を用いることでどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
メリットとしては、うまく活用すれば節税ができること、デメリットとしては会計処理の手間があることが挙げられます。具体的にどういったことなのかを解説します。
メリット
節税につながる
減価償却費が増えれば経費が増えることになります。経費が増えた結果、利益が少なくなります。所得税や法人税は利益に対して、税率をかけて計算を行うため、節税効果が期待できます。
また減価償却の特例を使うことで1個当たり30万円未満のものであれば、購入した年に1年でまとめて減価償却費の計上ができるため、利益が多い年に積極的に資産買い換えをすることで利益コントロールができます。
貸借対照表上、資産として計上される
減価償却資産の残高が決算書の貸借対照表上で資産に計上されます。減価償却資産を購入した時にキャッシュが出ていきますが、翌年以降はキャッシュが出ていくわけではありません。会社に多くの資産が残っていることを対外的に示せれば財務状況の評価は高くなります。
デメリット
会計処理が手間
減価償却を会計処理するにはまず減価償却費の計算からする必要があります。計算するにあたっては特例を使うのかどうか、耐用年数が何年なのか、定額法・定率法どちらで処理するのかによって計算方法が変わってきます。
税制改正への対応が必要
減価償却は税制改正によって処理の方法が変わることがあります。特例も期限付きであったり、税制改正によって計算方法が変わったりする恐れがあります。そのため税制改正がされた場合には対応に追われることもあるため、注意しましょう。
減価償却で行う計算方法について
減価償却で行う計算方法には定額法と定率法の2種類があります。それぞれの計算方法について例を踏まえながら解説していきます。
定額法
定額法は毎年同じ金額を減価償却費として計上する方法です。計算方法としては取得価額×定額法の償却率を元に計算を行います。減価償却資産によっては定額法での計算に限られるケースもあります。実際に例を踏まえて計算をしてみましょう。
事業で使用するパソコンを1台40万円で購入したケースを定額法で計算してみます。
まずパソコンの耐用年数は4年で、定額法による償却率は0.25になります。計算式に当てはめると40万円×0.25=10万円になります。
定率法
定率法は資産を取得した初めのうちに減価償却費を多く計上して、経過年数に応じて減価償却費の計上を徐々に減少させていく方法です。
以下の式で計算できます。
| 未償却残高 × 定率法の償却率 |
前述したパソコンを定率法で計算した場合には下記の通りです。
定率法による償却率は0.5になります。 計算式に当てはめると40万円×0.5=20万円になります。よって1年間で計上できる減価償却費は20万円です。
定率法の場合には償却費が償却保証額を下回りそうな場合には、それ以降は改正償却率を使用して計算するようになります。
減価償却の計算で知っておきたいこと
減価償却の計算をするうえで知っておきたいこととして、いつから償却を始めるのか、取得した資産の耐用年数をどうやって調べたらいいのかを具体的にみていきます。
減価償却はいつから?
まず減価償却をいつから処理する必要があるのかについては、実際に購入した資産を事業で使い始めた時から行います。
そのため、購入したものの現物がまだ納品されていない場合や、納品が完了したが、稼働はしていない場合にはその期間を減価償却の計算に含めることはできません。よって期中に購入をして稼働を始めた場合には月按分での減価償却費の計算が必要になります。
耐用年数の確認方法は?
耐用年数の確認方法としては、国税庁や東京主税局のホームページで確認ができます。また定額法による償却率や定率法による償却率についても確認ができます。
過去に取得した資産だと旧定額法や旧定率法で計算しなければいけないケースもあります。法改正によって償却率は変わっているため、減価償却費の計算をする時には注意しましょう。
中古のものも減価償却できる?
時には新品ではなく中古のものを購入する場合もあるでしょう。中古資産だからといって価値が低いわけではないため、中古資産も減価償却の処理をする必要があります。中古資産で減価償却の処理が必要になる基準は新品で購入した場合の減価償却の基準と変わりはありません。
ただし減価償却費の計算をする際に耐用年数が大きく変わります。通常の耐用年数から既に経過している分の期間を除く必要があります。中古資産の耐用年数の計算方法としては、既に耐用年数を超えている資産の場合には法定耐用年数×20%に相当する年数を耐用年数とします。
耐用年数の一部を経過した資産は、耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数を耐用年数とします。
例えば車両を例にすると、本来車両の耐用年数は6年です。既に6年経過している車両を営業車として購入した場合には6年×20%で1.2年になります。なお2年未満の場合には2年とされるため、この場合には耐用年数が2年になります。
次に3年経過している車両の場合にはどうなるでしょうか。まず耐用年数6年から経過した3年分を差し引きます。経過年数は3年なので3年×20%で0.6年になります。よって耐用年数は3年+0.6年で3.6年となります。なお1年未満は切り捨てになるため、耐用年数は3年で計算します。
直接法と間接法の違いとは?
減価償却には減価償却資産から減価償却費を直接減らしていく直接法と、減価償却累計額という勘定科目を設けて減価償却費を間接的に減らしていく間接法の2つがあります。簿記の原則にのっとって処理を行う場合には間接法を選ぶのが一般的です。
間接法であれば決算書に掲載する際に固定資産の価額がそのまま残って表示されます。直接法の場合には、決算書に掲載する際に固定資産の価額は減少していくことになります。経理処理に慣れていない個人事業主の方は直接法で処理するケースが多いです。
プライベートでも使用する場合は?
仮に事業とプライベートと両方で使用するような資産を購入した場合には、事業で使用する分のみを減価償却費として計上します。そのため、減価償却費を計算する際に、事業で何%利用しているのかの割合を決めたうえで計算をする必要性があります。
おわりに
まずはどういったものを購入した時に減価償却の処理が必要になるのかを覚えておきましょう。また減価償却の計算は定額法や定率法はもちろん、直接法や間接法、特例によって耐用年数に関係なく、処理を行う方法など、さまざまな処理方法があります。
それぞれの処理方法を理解して、決算時にどうやって処理するのか判断できるようにしましょう。減価償却の計算が分からない場合には、税理士といった専門家や税務署に確認をしたうえで適切な処理が必要です。


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