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個人事業主になるメリットと手続き方法|法人・フリーランスとの違いも解説

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働き方が選べる時代になりつつあり、会社員として雇用されつつ副業として開業したり、新たなチャレンジとして退職して事業を始めるといった、さまざまな働き方があります。開業にあたって、個人事業主か法人設立か悩むことも多いようですが、まずは個人事業主について知ることから始めましょう。
本記事では、個人事業主と法人の違いや個人事業主のメリット・デメリット、個人事業主の開業の手続きと注意点についてお伝えします。
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個人事業主とは

個人事業主とは

個人事業主とは、法人を設立せずに、個人で事業を営んでいる人のことをいいます。税務署に「開業届」を提出して事業の開始を申請するだけで、個人事業主となります。
「○○商店」など個人名で事業を行う自営業者には、個人事業主も含まれますが、個人事業主はあくまでも法人化していない事業者に限られます。
会社を設立した代表者は個人商店でも個人事業主でもありません。法人化せずに個人で事業を営む「個人事業主」の職種は、飲食業やIT関連業、小売業、教育関連業、不動産業、士業などあらゆる業種で多岐にわたります。

個人事業主と法人の違い

事業を営むという点では、個人事業主も法人経営者も共通しますが、権利義務、法的根拠、社会的信用度、税金面など多くの相違点があります。

法人とは

そもそも「法人」とは、社会的活動を営む組織であり、法律によって人と同じように権利と義務が認められています。
つまり、法人として「契約」の相手方となることができると同時に、法人として社会的責任を負います。法人には、株式会社などの「営利法人」のほか、財団法人や宗教法人など営利を目的としない「非営利法人」、独立行政法人などの「公的法人」などがありますが、ここでは、営利法人について記述します。

設立手続きの違い

個人事業主は、税務署へ「開業届」を提出し、事業の開始を申請するだけです。登記の必要もなく、費用もかかりません。
一方、株式会社などの法人は、出資者が出資をして会社を設立します。会社法に定める手続きに従って、設立登記や定款などの作成が必要です。出資額に規制はないものの、登記など設立費用として、少なくとも20万円程度は必要です。

税金面の違い

個人事業主と法人では、税金面でも相違点があります。個人事業主は、あくまでも個人であり、事業所得として所得税、住民税が課税されます。いずれも所得が高い人ほど税負担が重くなります。
一方で、法人は、法人税や法人住民税の課税対象となります。企業に対する収益力拡大に向けた前向きな投資や継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促すため税負担軽減が進み、税率は抑えられています。ただし、法人住民税は、最低でも7万円は課税されるため、利益が低い場合には、不利となります。

個人事業主と法人の違いのまとめ

個人事業主と法人について、それぞれの違いを「手続き」「開業費用」「税金」の面からまとめてみました。以下を参照してください。

個人事業主 法人
手続き 開業届の提出 法人登記
費用 - 出資金(資本金)
登記費用
税金 所得税(事業所得)
個人住民税
消費税
個人事業税
法人税
法人住民税
消費税
法人事業税

個人事業主とフリーランス

最近では、「フリーランス」という働き方が注目されていますが、企業や組織に属さず、個人で仕事を請け負うという点では同じ括りと考えてよいでしょう。
税務署に開業届を提出し、「税法上の区分」としての個人事業主に対して、フリーランスは「働き方」の呼称という違いです。開業届を提出せずにフリーランスとして働く人は個人事業主ではありません。また、フリーランスという働き方をしている人が法人登記した場合には、個人事業主ではなくなります。

個人事業主のメリットは?

個人事業主のメリットは?

では、個人事業主であることのメリットは何でしょうか。「自分の裁量で自由な働き方ができる」といったイメージが先行しますが、起業を考える場合には、きちんと理解したうえで準備を進めることをおすすめします。

開業届の提出だけで簡単になれる

起業にあたっては、まずは個人事業主か法人設立かを検討する必要があります。前述のとおり、個人事業主であれば、税務署に開業届を提出するだけで事業を開始することが可能です。
個人事業主は、出資金や登記の必要もないため開業費用もかかりません。法人設立に必要な定款作成も不要です。手間や時間をかけずに容易に開業できるのは個人事業主のメリットといえるでしょう。

自由な働き方ができる

なんといっても、時間の自由を手にすることができるのは最大のメリットでしょう。出勤時間を気にする必要もありませんし、天気や気温によって予定を変更することも自分で自由に決めることができます。
請け負う仕事を自分で選ぶことができ、報酬についても、知識やスキルがあれば相手と交渉できる場合もあります。会社員時代よりも、業務時間は短いにもかかわらず高い収入を得ることも不可能ではありません。

青色申告で特別控除が受けられる

個人事業主であれば、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出することで、最大65万円の特別控除が適用されるなど税制面での優遇があります。
会社員など給与所得者である場合には、勤務先から支給された給与から一定の給与所得控除額を差し引いたうえで給与所得の金額が決まりますが、個人事業主の場合には、売上(収入)から必要経費を差し引いて事業所得の金額を算出します。
さらに青色申告を行うことで特別控除が適用されれば、課税される所得税、住民税、個人事業税の節税が可能です。
青色申告承認申請書を提出しなかった場合には、白色申告となり基礎控除10万円のみ適用となります。必要書類や複式簿記の日々の記帳など負担も伴う青色申告ですが、税制面での優遇は活用したいメリットです。

赤字の繰り越しが可能

個人事業主としての開業当初は、なかなかペースがつかめず赤字となることも想定されます。個人事業主であれば、1月1日から12月31日までの1年間での赤字を申告(損失申告)することにより最大3年間まで損失を繰り越すことができます。
たとえば、開業1年目が300万円の赤字、2年目100万円の利益、3年目200万円の利益であった場合を考えてみましょう。
1年目は赤字のため税負担0円です。2年目は本来であれば100万円に対して税負担が生じるのですが、前年の赤字と相殺することで2年目も0円、3年目も赤字の繰越し残200万円があるため相殺により税負担は0円となります。
最大3年間にわたって赤字繰越しができることは、開業当初だけでなく、思いがけない外部要因などに影響を受けた場合でも事業の継続が可能ですし、さらに生活に支障をきたさない配慮があることは嬉しいメリットです。

収入増加の可能性

個人事業主として独立することで、自身の能力や努力に応じて収入を増やすチャンスが広がります。会社員の場合、月給や賞与は基本的に会社の規定に従って決められますが、個人事業主は自身の実力次第で収入を伸ばすことができます。

高単価の仕事を受注したり、複数のクライアントと取引を行ったりすることで、収入増加の機会を作ることができます。また、業務の効率化を図ることで案件数を増やすことも可能です。さらに、専門性を活かした付加価値の高いサービスを提供することで、単価を上げることができるなど、自由度も広がります。

定年がない

個人事業主には定年制度がないため、年齢に関係なく、働き続けることができます。会社員の場合、多くの企業で60歳や65歳に定年が設定されていますが、個人事業主は自身の体力や意欲に応じて、いつまでも現役として活躍できることが大きな魅力です。

長年培ってきた経験やスキル、人脈を活かせる仕事であれば、年齢を重ねるごとに価値を高めることも可能です。

また、高齢になってからも無理のないペースで仕事を続けられることも利点です。仕事量を自分で調整できるため、フルタイムでの勤務が難しくなっても、パートタイムのような働き方に移行することができます。このように、年齢や体力に合わせて柔軟に仕事のスタイルを変更できることは、長く働き続けるための重要な要素となっています。

屋号による信用力向上

個人事業主として開業する際、屋号(商号)を定めることで、事業としての信用力が大きく向上します。個人名だけで活動する場合と比べて、屋号があることで事業としての本格性や継続性が印象づけられたり、事業者としての立場が明確になるため、取引先からの信頼を得やすくなります。

また、金融面でも屋号を持つことは大きなメリットです。屋号付きの事業用口座を開設できることで、私的な支出と事業支出を明確に区分することができます。これは、経理の透明性を高めるだけでなく、金融機関との取引における信用度の向上にもつながります。

特に事業融資を検討する際、屋号があると有利です。銀行審査において、開業届を提出し、正式な屋号を持つ事業者であることは事業の信頼性を示す重要な指標となり、融資を受けやすくなる効果が期待できます。

経費計上による節税

個人事業主の所得税は、事業収入から経費を差し引いた金額が課税対象となります。この仕組みを理解し、適切に経費を計上することで、効果的な節税が可能です。会社員の給与所得とは異なり、事業に関連する支出を経費として認められるため、税負担を適正に抑えることができます。

例えば、事業収入が500万円で経費が200万円の場合、課税対象となる所得は300万円となります。事業に必要な備品の購入、通信費、交通費、事務所の賃料など、事業活動に直接関係する支出を経費として計上することで、課税所得を減らすことができます。これにより、所得税だけでなく、住民税や個人事業税なども含めた総合的な税負担を軽減する効果が得られます。

個人事業主のデメリットは?

個人事業主のデメリットは?

個人事業主として事業を行うことには、当然ながらメリットだけでなくデメリットもあります。ただし、デメリットがあるから「やらない」という選択をするのではなく、留意すべき点として捉えることをおすすめします。

複式簿記の帳簿が必要

メリットでもある青色申告の特別控除を受けるためには、複式簿記での帳簿作成が要件となります。「複式」という名のとおり、取引を複数の科目で記載する必要があり、慣れないと億劫に感じてしまうかもしれません。
複式簿記を行うことで、貸借対照表や損益計算書といった事業活動の分析に必要な書類を作成することができます。税制面での優遇とともに、個人事業主として「経営」という観点で知識と経験を積むことには意味があります。

確定申告が必要

個人事業主は、毎年確定申告を行う必要があります。会社員であれば、年末に勤務先へ書類を提出することで年末調整により所得税が計算され、勤務先経由で所得税の申告が行われますが、個人事業主は、自分で申告しなければなりません。
また、毎月源泉徴収される会社員と比較して、個人事業主は、確定申告時に一括で所得税を納付する必要があることも負担といえるでしょう。

失業保険がない

給与という一定の収入が得られる会社員と比較すると、個人事業主の収入は、仕事の依頼状況によっては不安定になりがちです。また、失業保険がないため、収入が途絶えた場合のリスク対策が必要です。

収入の不安定さ

個人事業主は、収入増加の可能性がある一方、仕事の受注状況や市場変動の影響を受けやすいです。会社員のように毎月一定額の給与が保証されているわけではないため、収入の安定性という点では大きな課題となります。

特に開業直後は、顧客基盤が確立していないため、収入が安定するまでに時間がかかることが一般的です。また、季節変動や景気の影響を直接受けやすく、繁忙期と閑散期で収入に大きな差が生じることもあります。

責任の所在

個人事業主の場合、事業活動に関するすべての責任が個人に帰属します。これは法人経営と大きく異なる点であり、事業上の判断や問題に対して、すべて個人が責任を負わなければなりません。

最も重要な点は、事業上の損失や債務に関する責任です。法人の場合、原則として会社の損失や債務は法人の財産の範囲内に限定されますが、個人事業主の場合は、事業用の財産と個人の財産が区別されません。そのため、事業で発生した債務を返済するために、個人の財産を処分しなければならない場合もあります。

個人事業主になるには

個人事業主になるには

法人設立と異なり、時間も手間もかからず、比較的容易く事業を始めることのできる「個人事業主」ですが、所在地や事業内容、税制面について理解とともに準備をしておくことが大切です。

開業届を税務署に提出

個人事業主になるためには、原則として、事業開始から1ヵ月以内に所轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
いわゆる開業届で、「所在地」「屋号」「事業の概要」などを記載します。国税庁WEBサイトからのダウンロードができるほか、税務署で受け取ることもできます。

青色申告承認申請書を提出する

「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出とともに、青色申告をしたい場合には「青色申告承認申請書」を提出します。
青色申告は、年末に貸借対照表と損益計算書の作成など正規の簿記によることが原則であるため、ハードルが高い印象ですが、特別控除などの税制面での優遇が適用されることなどをふまえると検討したい制度です。「青色申告承認申請書」は、事業開始日から2ヶ月以内に提出する必要があります。

個人事業主になる前後にやること

個人事業主になることは、比較的簡単ですが、事業を主体的に行う「経営者」であることから、開業にあたって検討すべきことは多くあります。個人事業主になる前後にやることとして、主なものを紹介しましょう。

個人事業主になる前にやること

個人事業主になる前にやっておくべきこととしては、以下のとおりです。

●事業計画案を考える
自由な働き方ができるのが個人事業主のメリットですが、やみくもに好きなことだけで利益を上げられることは難しいでしょう。売上目標や取引先、何をどのように事業を進めていくのか開業にあたって、じっくり検討する必要があります。後からの軌道修正も可能ですが、無駄な時間やコストが発生することが考えられます。
詳細な事業計画書を作成することで、やりたいことがより明確になることもあります。基本的には、経営方針としての内部的資料ですが、融資を受ける際には金融機関に提出する重要な資料となります。書き方やテンプレートについては、WEB上で検索すれば参考になるでしょう。

●ある程度のスキルを身に付ける
個人事業主としての開業は、やりたいことの実現とともに「やれること」であることがポイントです。事業として、継続的に売上を発生させるためには、プロとしての知識とスキルは必須といえるでしょう。開業にあたって、必要なスキルは、お金をかけても身につけておくべきです。

●会社員から個人事業主になるならローン等の契約も
個人事業主となる経緯や背景はそれぞれですし、規模もさまざまです。とはいえ、一般的に、収入の安定した会社員と比較すると、開業間もない個人事業主の信用は低いのが現状です。ローン審査が通りにくくなるため、事業面だけでなく、生活面においても、ローンの申込みは、会社員であるうちに申込むことをおすすめします。
また、信用という点では「クレジットカード」も同様です。開業後は事業決済用のクレジットカードが必要となるケースも多いものの、勤続年数や安定した年収などが申込要件であるため、審査に通らないことも想定されます。早めに準備しておくとよいでしょう。

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個人事業主になった後にやること

最近では、会社員の副業として開業するケースも増えていますが、退職する場合には、自分自身で社会保険に加入する必要があります。会社員時代には、会社に任せきりで制度がわからないという人も多いのですが、社会人として、また病気や老後のリスク対策として、遅滞なく手続きを行いましょう。

●国民健康保険への加入
国民健康保険は、住民票のある市区町村で加入の手続きを行います。駅などに市区町村役場の出張窓口が設置されていることも多くありますが、基本的に出張窓口では対応していないため、市区町村役場に出向く必要があります。
会社を退職して個人事業主となる場合、それまでの健康保険を「任意継続」する選択肢もあります。国民健康保険には「扶養」の概念がないため、扶養義務のある配偶者や親族がいる場合には、人数分の加入手続きをしなければならず、保険料も負担となる場合があります。
任意継続の保険料は、労使折半ではなくなるため全額負担になるものの、扶養親族もふくめて加入することができます。いずれかを比較検討したうえで加入することをおすすめします。

●国民年金への加入
会社員が給与から差し引かれる厚生年金保険料は、国民年金と上乗せの厚生年金の保険料であり、労使折半で負担しています。個人事業主は、国民年金のみに加入し、毎年決定される保険料を支払わなければなりません。
65歳以降受け取ることのできる老齢年金は、今後も会社員として働き続ける場合と比較すると減ることになりますので、国民年金だけでなく、国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)への加入で将来へ備えることをおすすめします。
なお、これまでの企業型確定拠出年金(401k)は、iDeCo(個人型)に移管することができますので、退職後は早めに手続きをしましょう。

●確定申告の事前準備
また、所得税についても、1年間の収入や経費について集計し、確定申告をしなければなりません。会社員時代には、給与から差し引かれた源泉所得税は、会社で年末調整を行い、納税を行ってくれていましたが、個人事業主となると、自分自身で納税する必要があります。
確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得からそれぞれの事情に応じた控除などを計算し、所得税額を算出します。青色申告承認申請書を提出している場合には、貸借対照表等の必要な添付書類とともに、翌年2月16日から3月15日までに申告・納税する必要があります。
いざ年末になって集計しようと思っても記録も記憶もないことが多いため、会計ソフトやクラウド上での日々の取引管理の活用をおすすめします。費用や使い勝手を比較検討のうえ、自分にあった方法を見つけましょう。

個人事業主向けの主な支援制度

個人事業主が活用できる支援制度として、事業の成長段階や目的に応じてさまざまな選択肢があります。

創業支援金

個人事業主として新たに事業を始める方向けに、さまざまな創業支援制度が用意されています。

●日本政策金融公庫の創業融資

事業開始時に必要な資金を低金利で調達できる制度です。一般的な融資と比べて金利が低く、無担保での融資も可能となっています。融資限度額は各種融資制度により数百万円から数千万円まで幅広く設定されています。

●創業補助金
新規創業者の事業立ち上げを支援する制度として注目されています。設備投資や人件費などの創業時の経費を補助するもので、補助率は対象経費の2分の1以内、最大200万円の補助を受けることができます。特に、地域の課題解決に資する社会的事業を行う場合は、優先的に採択される傾向にあります。

●地方自治体独自の創業支援制度
地域の活性化や雇用創出を目的として設けられています。補助金の給付に加えて、創業時の経営相談や事業計画策定支援、創業セミナーの開催、オフィス賃料の補助、専門家による経営指導なども受けることができます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化に取り組む小規模事業者を支援する制度です。通常枠では最大50万円、特別枠では最大200万円が補助されます。2024年は特にインボイス制度対応のための補助金として、50万円が上乗せされる特例も設けられています。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、ポストコロナに対応した事業再構築を行う事業者を支援する補助金制度で、新市場進出や、事業・業種転換、事業再編などを支援しています。
個人事業主と中小企業が対象で、補助率1/2 から 2/3 で補助上限額最大1.5億円となっています。

参考:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/

IT導入補助金

IT導入補助金は、個人事業主のデジタル化を強力に後押しする制度として注目されています。この補助金は、業務効率化やDXの推進、インボイス制度への対応など、さまざまな目的で活用することができます。

通常枠では、業務効率化や売上向上に資するITツールの導入を支援します。補助率は購入費用の2分の1以内で、補助額は5万円から最大450万円までとなっています。導入するITツールの業務プロセス数によって補助額が決定され、1プロセス以上で150万円未満、4プロセス以上で450万円までの補助を受けることが可能です。

特に注目すべきは、インボイス対応類型です。2023年10月から開始されたインボイス制度に対応するためのITツール導入を支援する制度で、小規模事業者の場合は最大で費用の5分の4(補助率4/5以内)まで補助を受けることができます。対象となるITツールには、会計ソフト、受発注システム、POSレジなどが含まれます。

補助対象となるITツールは事前に事務局の認定を受けたものに限定されており、導入後は効果測定のための報告が必要となります。申請にあたっては、IT導入支援事業者のサポートを受けながら進めることができ、事業計画の策定から申請手続きまでの支援を受けることが可能です。

なお、申請期限や予算枠が設定されているため、導入を検討している場合は早めの準備と申請をお勧めします。

個人事業主が受け取れる給付金一覧は下記記事で詳細に説明しています。ご覧ください。
個人事業主が受け取れる給付金とは?2024年現在活用できる補助金・助成金も紹介

その他の支援制度

個人事業主の経営をサポートする制度として、金銭的な支援以外にもさまざまな支援制度が用意されています。これらの制度を活用することで、経営の安定化や事業の成長を図ることができます。

●経営相談・専門家派遣制度
商工会議所や商工会を通じて利用できる支援制度です。経営課題の解決や事業計画の策定など、経験豊富な専門家から無料または低額で助言を受けることができます。

各種セミナーや研修制度も充実しており、経営ノウハウ、財務管理、マーケティング、IT活用など、事業に必要な知識やスキルを体系的に学ぶことができます。多くの場合、無料または低額で参加でき、同業者とのネットワーク構築の機会としても活用できます。

●信用保証協会による保証制度
個人事業主の資金調達をサポートする重要な制度です。金融機関からの借入に際して、信用保証協会が保証人となることで、円滑な資金調達が可能となります。特に、創業間もない事業者や担保が不足する事業者にとって、重要な支援制度となっています。

サラリーマンが副業を行い、個人事業主になる場合の注意点

近年、副業・兼業を認める企業が増加傾向にある中、サラリーマンが個人事業主として副業を始めるケースが増えています。ただし、開始にあたっては、いくつかの重要な事項確認と手続きが必要となります。

会社への報告義務

サラリーマンが副業として個人事業主になる場合、まず確認すべきなのは自社の就業規則です。

就業規則では、副業の可否だけでなく、具体的な制限事項や報告手続きが定められています。多くの企業では、副業開始前の届出や承認が必要とされており、業務内容や予定収入額、従事時間などの詳細な報告を求められることがあります。

特に注意が必要なのは競業避止義務です。本業と競合する事業や、会社の利益を損なう可能性のある事業は、原則として認められません。また、取引先との関係で利益相反が生じる可能性がある場合も、慎重な判断が求められます。
報告のタイミングについても重要です。副業を開始する前に必ず会社に報告し、承認を得る必要があります。また、副業の内容に変更がある場合や、副業収入が大幅に増加する場合なども、適宜報告が必要となることがあります。
なお、就業規則に副業に関する規定がない場合でも、安易に黙って始めるのは避けるべきです。

収入の上限

サラリーマンが個人事業主として副業を行う場合、いくつかの重要な収入の上限を意識する必要があります。

まず、確定申告の基準として、副業による所得が20万円を超えると確定申告が必要となります。ここでいう所得とは、収入から経費を差し引いた金額を指します。逆に、所得が20万円以下であれば、原則として確定申告は不要です。

次に、社会保険の扶養に関する基準があります。副業による収入が130万円以上になると、配偶者の社会保険の扶養から外れる可能性があります。この基準を超えると、国民健康保険や国民年金に自身で加入する必要が生じ、新たな保険料負担が発生します。

さらに、扶養控除に関する基準として、扶養されている場合は給与所得と雑所得の合計額が48万円を超えないように注意が必要です。この金額を超えると扶養から外れ、扶養者の税負担が増加します。

確定申告の必要性

前述の通り、副業による所得が20万円を超えた場合、毎年2月16日から3月15日までの間に確定申告が必要です。確定申告を行うことで、副業に関連する経費を適切に計上し、節税効果を得ることができます。

例えば、事務用品費、通信費、交通費、資格取得費用など、副業に必要な支出を経費として計上することで、課税所得を減らすことが可能です。特に、本業の給与所得とは別に経費計上ができることは、大きなメリットといえます。

初めて確定申告を行う場合は、必要書類の準備や申告書の作成に時間がかかることを考慮し、余裕を持って準備を進めましょう。

時間管理のコツ

本業と副業を両立させるためには、効率的な時間管理が不可欠です。限られた時間の中で最大の成果を上げるために、いくつかの重要なポイントがあります。

まず、タイムマネジメントツールの活用が効果的です。スマートフォンのカレンダーアプリやタスク管理アプリを使用することで、本業と副業の予定を一元管理することができます。特に、GoogleカレンダーやTrello(トレロ)などのツールは、スケジュールの可視化や作業の進捗管理に役立ちます。これにより、時間の使い方を客観的に把握し、より効率的な時間配分が可能となります。

次に、優先順位の明確化が重要です。本業と副業の両方でタスクが発生する中、何を優先すべきかを常に意識する必要があります。緊急性と重要性の両面から各タスクを評価し、優先順位をつけることで、限られた時間を最適に配分することができます。特に、本業に支障が出ないよう注意を払いながら、副業のタスクを組み込んでいくことが大切です。

作業の効率化とルーティン化も重要なポイントです。例えば、平日の夜は2時間、週末は午前中を副業の時間として確保するなど、定期的な時間枠を設定することで、仕事のリズムを作ることができます。また、似たような作業はまとめて行うなど、効率的な作業方法を確立することで、限られた時間を有効活用できます。

リスク管理

適切なリスク管理は、持続可能な副業経営の重要な要素となります。

●健康管理
本業での勤務に加えて副業を行うことで、心身に大きな負担がかかる可能性があります。十分な睡眠時間の確保、規則正しい食事、適度な運動など、基本的な健康管理を怠らないことが重要です。

また、業務過多を防ぐためには、適切な仕事量の管理が欠かせません。受注可能な仕事量を見極め、無理のない範囲でスケジュールを組むことが重要です。特に副業開始直後は、徐々に仕事量を増やしていくなど、慎重なアプローチが推奨されます。また、繁忙期と閑散期を見据えた計画的な仕事の配分も必要です。

●トラブル発生時の対応策の準備
例えば、本業での突発的な残業や副業での納期遅延など、予期せぬ事態に備えて、あらかじめ対応手順を決めておくことが重要です。また、取引先とのトラブルや契約上の問題に備えて、適切な保険加入や法的知識の習得も検討すべきです。

●本業と副業の情報管理

情報管理も重要なリスク管理の一つです。機密情報の取り扱いには特に注意を払い、本業と副業の情報を明確に区分して管理する必要があります。

おすすめの業務効率化サービス

個人事業主の業務をより効率的に進めるために、さまざまなツールが提供されています。詳しく解説します。

会計ソフト

個人事業主の会計業務を効率化する代表的なツールとして、クラウド会計ソフトがあります。これらのソフトは、確定申告機能を標準搭載し、領収書のデータ化機能も備えています。スマートフォンで撮影した領収書を自動で読み取り、仕訳まで行ってくれる機能は、特に便利です。また、銀行口座やクレジットカードと連携することで、取引データを自動で取り込むことも可能です。

クラウドサービス

日々の業務管理には、各種クラウドサービスの活用が効果的です。ファイル共有にはDropboxやGoogle Driveを使用することで、重要書類を安全に保管し、必要な時にすぐにアクセスできます。プロジェクト管理にはTrelloやAsanaが便利で、タスクの進捗管理や期限管理が容易になります。また、取引先とのコミュニケーションツールとしては、SlackやMicrosoft Teamsが広く使われており、効率的な情報共有が可能です。

経費管理に役立つクレジットカード

個人事業主の経費管理として、クレジットカードの導入がおすすめです。
ビジネスでの支払いをビジネスカードに一本化すると、経費の金額が自動的に明らかになり経費計上の手間を簡略化できます。カードの明細は支払いが経費にあたることを証明する手段にもなるため、確定申告の際に情報が足りないという理由で困ることもなくなります。ま た、引き落としの口座として法人口座を利用することで、法人利用と個人利用を区別でき、経費管理がしやすくなります。

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おわりに

事業を始めるにあたって、簡易な手続きで費用もかからない「個人事業主」には、メリットが多くあります。何よりも自由性が魅力でしょう。ただし、事業主として、事業計画、資金面、社会保険等すべて自分自身の責任で行う必要があり、想定していた以上に苦労するという声もあります。
やみくもな開業や軽はずみな退職はおすすめしません。個人事業主として「開業する」「事業を行う」ことについて、今一度考えてみてください。