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繰延資産って何?会社法、税法で違う?経営における活用方法も解説

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繰延資産って何?会社法、税法で違う?経営における活用方法も解説
みなさんは、財務三表の1つ貸借対照表に記載される「繰延資産」をご存知でしょうか?繰延資産は、会社経営を行っている方や経理・財務担当の方であれば、必ず知っておきたい資産の1つです。
とくに会社を設立したばかりの方は、継続して売上があがる目処が立つまで、いかに効率的な資金繰りを行うかが肝となってきます。そのようなときに役立つのが、繰延資産の活用です。
本記事では、繰延資産について会計初心者の方にもわかりやすく徹底解説します。ぜひ最後まで読んでみてください。

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繰延資産とは?

繰延資産とは?

繰延資産は、会計上で費用とされる支出をしたときに全額を費用としては計上せず、将来の収益を生み出すという理由から資産に計上されることとなった資産です。

費用として支払われるお金のなかには、支払ったあとに長期間収益を生み出し続ける可能性があるものもあり、それらの費用に関しては適切な期間で費用を配分することが好ましいとされています。そこで、いったん資産として計上したあとに、数年間にわたって費用として計上(償却)するという会計上の特殊な処理が認められているのです。

また、繰延資産は会社法における「会計上の繰延資産」と税法における「税務上の繰延資産」の2種類に分類することができます。以下では、それぞれの繰延資産について具体的にご説明していきます。

会社法における会計上の繰延資産

まずは、会社法における会計上の繰延資産についてです。支出したあとに長期間収益を生み出し続ける可能性があることから、繰延資産として計上することができる費用には、以下のようなものがあります。

■創立費
会社の設立にかかった費用のことです。
例:登録免許税・定款作成費用
■開業費
会社を設立したあと、事業を開始するまでの間にかかった費用のことです。
例:広告費・名刺作成費
■株式交付費
株式関連の費用です。
例:新株発行費用・自己株式処分費用
■社債発行費
社債を発行するためにかかった費用のことです。
■開発費
新技術の開発や新市場の開拓などにかかった費用のことです。

税法における税務上の繰延資産

次に、税法における税務上の繰延資産についてです。税法において繰延資産として計上することができる費用には、以下のようなものがあります。

■公共的、共同的施設の設置又は改良のために要する費用
例:商店街のアーケード設置費用
■建物等を賃借するために支出する権利金等
例:賃貸借契約時の礼金など(敷金や保証金は含まれない)
■役務提供を受けるための権利金
例:フランチャイズへの加盟金・ノウハウの使用料
■広告宣伝用資産を贈与したことによる費用
例:自社製品の広告宣伝のための店頭の看板やショーケースなどの資産の贈与にかかった費用
■その他、自己が便益を受けるための費用

繰延資産の償却期間と償却限度額

繰延資産の償却期間と償却限度額

繰延資産は、いったん資産として計上したあと、数年間にわたって償却します。その際、各繰延資産にはどれくらいにわたって償却するかという償却期間と、償却することができる上限額である償却限度額に従って償却を行う必要があります。
以下では、上記と同様に会社法と税法にわけて、繰延資産の償却期間と償却限度額のルールについて見ていきます。

会社法における会計上の繰延資産の場合

会社法における会計上の繰延資産の場合、償却方法として「均等償却」と「任意償却」の2つから選ぶことが可能です。資産を定められた償却期間で均等に償却していく「均等償却」を選んだ場合の償却期間は、以下のようになっています。

■創立費・開業費・開発費:5年
■株式交付費:3年
■社債発行費:社債の償還期限内

一方で、「任意償却」を選んだ場合は、好きなときに好きなだけ償却することが可能です。
また、償却限度額は、どの繰延資産に関しても帳簿上の残存価額とされています。

税法における税務上の繰延資産の場合

税法における税務上の繰延資産に関しては、償却期間の算出方法がかなり複雑になっています。詳しくは、国税庁のホームページ「繰延資産の償却期間」をご確認ください。

また、償却限度額は、以下の式から算出することができます。

繰延資産の額×当期の月数÷償却期間の月数

繰延資産はどのように活用できるの?

繰延資産はどのように活用できるの?

いったん資産として計上したあとに、数年間にわたって費用として計上し償却することができる繰延資産は、会社経営においてさまざまな形で活用することができます。

例えば、設立して間もない会社は、まだ十分な売上をあげることができていない場合があるかと思います。このような状態で当期にかかった費用を一気に計上すると、赤字になってしまう可能性があります。

そこで重要なのが、繰延資産である創立費・開業費などを活用です。いったん資産として計上することで、当初の費用計上額を軽減することができます。

また、会社法における繰延資産では、任意償却をすることもできます。任意償却では償却期間に制約がないため、利益が多く出て黒字に転じているときは償却金額を多くして、逆に利益が少なくて支出を抑えたいときには償却金額を減らす(またはゼロにする)といった形でコントロールすることも可能です。

繰延資産の活用は赤字の軽減や節税につながるため、会社経営を行う方や経理・財務担当の方は押さえておきたい知識です。

よくある質問

Q1 繰延資産とは?

繰延資産は、会計上で費用とされる支出をしたときに全額を費用としては計上せず、将来の収益を生み出すという理由から資産に計上されることとなった資産です。

Q2 繰延資産はどのように活用できるの?

いったん資産として計上したあとに、数年間にわたって費用として計上し償却することができる繰延資産は、会社経営においてさまざまな形で活用することができます。

繰延資産についてのまとめ

繰延資産についてのまとめ

本記事では、繰延資産について解説しました。繰延資産には会社法におけるものと税法におけるものの2種類があり、それぞれ償却期間や償却限度額なども異なります。活用することで、会社経営にさまざまなメリットがあるので、ぜひ押さえておいてください。

ただし、繰延資産を活用するには、資産として計上したり費用として計上したりする際に、複式簿記のテクニックが必要不可欠です。簿記や会計の知識がない方は不安に思われるかもしれませんが、複式簿記による帳簿付けの土台の1つとなる経費管理を簡単に行える「クラウド型経費精算サービスStaple」や直感的な画面構成が魅力である会計ソフトの「かんたんクラウド」なら、みなさんの会計処理を徹底的にサポートしてくれます。

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会計ソフトやビジネスカードを活用して、円滑な会社経営を行っていきましょう。

この記事を監修した人

内山 貴博
内山 貴博
内山FP総合事務所株式会社代表取締役。九州共立大学経済学部非常勤講師。大学卒業後、証券会社の本社部門に勤務後、2006年に独立。FP相談業務を中心に、セミナー、金融機関研修、FPや証券外務員の資格対策講座などを担当。専門誌や情報サイトでの執筆も。また、中小企業の経営者向けに経営と家計を融合したコンサルティング業務や、日本での生活やお金のことに疑問を抱える外国人向けのFP相談業務(英語)を開始するなど、FPとしてできることは何でも挑戦すべく、日々活動中。

【保有資格】
CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、MBA(九州大学大学院経済学府 経営修士課程修了)