取引における「支払いサイト」とは?財務状態の安定性を知るための指標も紹介
支払いサイトは企業の資金繰りを左右する非常に重要な要素であり、取引の際には自社の経営状況や取引先との関係に応じた適切な支払いサイトを設定する必要があります。
本記事では、支払いサイトの基本的な情報や一般的な支払いサイトの長さ、支払いサイトの決め方などを解説します。
支払いサイトとは?
支払いサイトとは、商取引において、取引代金の請求日(または締め日)から実際に代金が支払われるまでに設けられる期間のことです。締切日に確定した取引金額をどの程度先の日付に支払うかを示すものであり、通常は日数で表されます。
商取引のたびに都度支払いを行うのではなく、締め日まで取引代金を管理して、支払いサイトを設けて一定期間後にまとめて支払う方式を掛取引といいます。日本では一般的な取引方法であるため、覚えておきましょう。
支払いサイトから会社の財務状態の安定性がわかる
企業の財務の安定性を把握するうえで分析すべき主な要素として、売上債権・棚卸資産・仕入債務の3つがあります。このうち、仕入債務は前述した支払いサイトを用いた概念です。
仕入債務とは、仕入を行ったもののまだ支払っていない代金(買掛金)のことです。つまり、支払いサイトが設けられている取引によって仕入れたということになります。
仕入債務は、この先お支払いの義務があるものなので貸借対照表上では「負債」に含まれます。仕入債務が多ければ多いほど、財務状態は苦しいといえるでしょう。
以下では、仕入債務を通じて企業の財務状態を把握するための2つの指標を紹介します。
①仕入債務回転率
1つ目は、仕入債務回転率という指標です。仕入債務と売上原価(仕入にかかった費用)のバランスを知ることができるもので、以下の式から算出することができます。
仕入債務回転率=(売上原価÷仕入債務)×100
仕入債務が多いほど仕入債務回転率は低くなり、仕入からお支払いまでの期間が長いことを意味します。
支払いサイトが長いことは、お支払いまでに時間の余裕があるという点で望ましいと考えられます。しかし、仕入債務回転率が急激に低下している場合は、支払条件の悪化や支払遅延が発生している可能性があり、財務状態に何らかのリスクが生じているかもしれません。
②仕入債務回転期間
2つ目は、仕入債務回転期間という指標です。
仕入から代金のお支払いが完了するまでの期間を知ることができるもので、月単位もしくは日数単位で計算します。月単位で計算する場合は仕入債務回転月数、日数単位で計算する場合は仕入債務回転日数となり、以下の式から算出可能です。
仕入債務回転月数=仕入債務÷(売上原価÷12(ヵ月))
仕入債務回転日数=仕入債務÷(売上原価÷365(日))
指標の見方ですが、仕入債務回転期間が長いことは、手元にキャッシュが残りやすいことを意味しています。
ただし、外部からは財務状態が苦しいためお支払いを意図的に遅らせていると見なされる可能性があるため、注意が必要です。
一般的な支払いサイトの長さは「30日」か「60日」
支払いサイトに設定される期間の長さは、「30日」または「60日」が一般的です。取引内容や経済的な状況に合った支払いサイトを設定するためにも、それぞれの期間にどのような特徴があるのか把握しておきましょう。
以下で支払いサイトの期間ごとの特徴を解説します。
30日
30日は代表的な支払いサイトの長さで、月末締め・翌月末払いのお支払いパターンになっています。
例えば、売り手が月末にその月の売上を締めて請求書を発行した場合、買い手は翌月末までにお支払いを行います。
30日の支払いサイトは、月ごとに売上高や仕入債務を把握できるのがメリットです。出入金の管理がしやすいことから、多くの取引では30日の支払いサイトが設定されています。
また、お支払いまでの期間が長いため、請求書など取引に必要な書類も余裕を持って発行できます。
60日
60日も一般的な支払いサイトの長さです。お支払いパターンは月末締め・翌々月末払いになっています。
例えば、売り手が月末にその月の売上を締めて請求書を発行した場合、買い手は翌々月末までにお支払いを行います。
この支払いサイトでは60日という長い期間お支払いが猶予されるため、買い手は資金繰りをしやすいメリットがあります。
一方で、売り手はお支払いまでの期間が長い分、資金繰りに影響する場合があるので注意しなければいけません。
60日の支払いサイトは、お支払いが最大で3ヵ月間猶予されます。その間、売り手は買い手からの入金がない状態で資金繰りをしなければならず、無理に60日の支払いサイトを設定すると経済的な負担を感じる可能性もあります。
下請法に該当する場合の支払いサイトは60日以内
買い手と売り手がそれぞれ合意しているのであれば、基本的に支払いサイトは自由に決められます。ただし、下請法に該当する場合の支払いサイトは60日以内に設定しなければいけません。
下請法は「下請代金支払遅延等防止法」の略で、下請事業者の利益の保護や取引の適正化を推進するための法律です。下請事業者が親事業者と公平に取引できるよう、さまざまな事項が定められています。
下請法には支払期日に関する事項も定められており、下請事業者に対する代金のお支払いは商品やサービスが提供された日から60日以内に行うことが義務付けられています。つまり、下請法に該当する場合に設定できる支払いサイトは最長で60日となります。
支払いサイトの決め方
支払いサイトの決め方は、買い手と売り手でそれぞれ異なります。以下では、買い手と売り手に分けて支払いサイトの決め方を紹介します。
買い手の場合
買い手の場合、支払いサイトは長いほうが良いでしょう。なぜなら、お支払いが猶予されるほど資金繰りを安定させやすいためです。支払いサイトが長ければ、支払代金も余裕を持って準備できます。
ただし、先述したように下請法に該当する場合の支払いサイトは最長で60日までです。
売り手の場合
一方、売り手の場合、支払いサイトは短いほうが良いです。支払いサイトを短めに設定して売上を早く回収すれば、資金に余裕が生まれやすくなります。
また、手持ちの現金に余裕がない状態で支払いサイトを長く設定すると、資金が一時的に不足する可能性があります。このような点からも、支払いサイトは短く設定することをおすすめします。
ただし、支払いサイトが短すぎると請求書の作成を急がなければいけないため、ある程度期間に余裕を持って設定すると良いでしょう。
支払いサイトを長くする・短くする方法
買い手と売り手で理想的な支払いサイトが異なる以上、自社の希望通りの支払いサイトを設定したうえで取引を行うのは簡単ではありません。
自社にとって理想的な支払いサイトを設定するためには、相手に納得してもらえるように提案したり、交渉したりする必要があります。
以下では買い手が支払いサイトを長くする方法、売り手が支払いサイトを短くする方法をそれぞれ紹介します。
【買い手側】支払いサイトを長くする方法
買い手が資金繰りを安定させるには、取引時の支払いサイトを長く設定することが大切です。支払いサイトを長く設定する方法としては、以下のようなものが挙げられます。
● 競合他社のケースを引き合いに出しつつ交渉する
● 過去の取引でお支払いの遅延がないことを強調したうえで交渉する
● 支払いサイトが長くても問題ないことを伝えるために、自社の財務状況やキャッシュフローを示す
● 長期の支払いサイトを設定する見返りとして、大量注文など売り手にとってメリットが多い取引を提案する
【売り手側】支払いサイトを短くする方法
一方、売り手が支払いサイトを短く設定する方法には以下のようなものがあります。
● 割引や特典など、早期お支払いを行う場合のメリットを用意する
● 新規契約時には支払サイトを短くする条件を明示する
● 請求書や契約書には支払期限をわかりやすく記載する
● 支払期限が近づいたら、リマインダーを送信してお支払いを促す
支払いサイトを長くしたい場合はビジネスカードの活用がおすすめ
支払いサイトを長くしたい場合は、ビジネスカードを活用するのもおすすめです。
基本的にビジネスカードの利用金額は翌月以降の請求になるため、ビジネスカードで取引時の代金を決済すれば支払いサイトを長くできます。
例えば、クレディセゾンのビジネスカードなら決済からお支払いまでに最大56日間の猶予があるので、お支払いにより余裕を持って取引ができます。
以下では、クレディセゾンが発行するおすすめのビジネスカードを2枚紹介します。
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス(R)・カード
| 年会費 | 無料 |
|---|---|
| ポイント還元率 | 海外利用で2倍(※1)(※2) |
| スマホ決済 | Apple Pay、Google Pay™、QUICPay™(クイックペイ) |
| 追加カード | 年会費無料で9枚まで発行可能 |
| 主な特典 | ・「かんたんクラウド(MJS)」月額利用料 2ヵ月無料ご優待 ・4倍ポイントサービス ・セゾンビジネスサポートローン ・福利厚生サービス「セゾンフクリコ」 ・エクスプレス予約サービス(プラスEX会員) ・エックスサーバーご優待 |
セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス(R)・カードは、年会費無料で利用できるビジネスカードです。
申込時は決算書や登記簿謄本の提出が不要なため、起業して間もない会社や個人事業主の方でも気軽に申し込めます。
また、一時的な増額申請に対応しているため、高額になりやすい税金も無理なく支払えます。支払額に対してはポイントが還元され、節約や経費削減につながります。
このほか、会計・給与計算のクラウドサービス「かんたんクラウド(MJS)」の月額利用料2ヵ月無料という特典が付帯しているのも魅力です。本サービスには自動仕訳作成機能が搭載されており、経理業務の効率化を行えます。
さらに、特定のビジネス関連のサービスでカードを利用すると、通常のポイント還元率0.5%(※1)(※3)の4倍である2%のポイント還元が受けられます。以下は、ポイント4倍サービスの対象になるサービスの一例です。
● アマゾンウェブサービス(AWS)
● エックスサーバー
● お名前.com
● かんたんクラウド(MJS)
● クラウドワークス
● サイボウズ
● マネーフォワード クラウド
● モノタロウ(事業者向けサイトのみ対象)
● Yahoo!ビジネスサービス
日常生活で役に立つセゾンカード会員限定の特典も充実しており、例えば、毎週木曜日に全国のTOHOシネマズでお好きな映画を1,200円(税込)で鑑賞いただける「セゾンの木曜日」があります。
セゾンカードのスマートフォンアプリ「セゾンPortal」からクーポンを取得いただき、WEB(インターネットチケット販売“vit®”)または劇場でのチケット購入時にクーポンをご利用いただくことで特別料金で映画鑑賞が可能です。
(※1)一部還元率の異なるサービスおよび加盟店がございます。
(※2)小数点以下は繰り上げになります。
(※3)ほかカードにてSAISON MILE CLUB(セゾンマイルクラブ)へご入会いただいている方は本サービスの対象外となります。
>>詳細はこちら
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス(R)・カード
| 年会費 | 初年度無料、2年目以降は33,000円(税込) |
|---|---|
| ポイント還元率 | 海外利用で2倍(※1)(※2) |
| スマホ決済 | Apple Pay、Google Pay™、QUICPay |
| 追加カード | 年会費3,300円/枚(税込)で9枚まで発行可能 |
| 主な特典 | ・コンシェルジュ・サービス ・プライオリティ・パスに年会費無料で登録可能 ・セゾン弁護士紹介サービス ・法人向け顧問弁護士サービス「リーガルプロテクト」ご優待 ・各種のビジネスサポート特典 |
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス(R)・カードは、手厚いビジネス向けの特典が付帯したプラチナビジネスカードです。
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世界中の空港ラウンジを利用できる「プライオリティ・パス(通常年会費469米ドル/プレステージ会員)」には年会費無料で登録でき、フライト前の待ち時間もゆったり過ごせます。
ビジネス向けの特典としては「セゾン弁護士紹介サービス」が利用でき、弁護士に相談したいときには第一東京弁護士会を通じて弁護士の紹介を受けることが可能です。
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(※3)「カードのご利用に関するお問い合わせ」のみ、10:00〜17:00の対応とさせていただきます。
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よくある質問
支払いサイトに関するよくある質問を紹介します。自社の財務状況を把握したい方は参考にしてください。
Q1 支払いサイトって何?
支払いサイトとは、商取引において、取引代金の締切日から実際に代金が支払われるまでに設けられる期間のことです。
締め日(または請求日)に確定した金額を、どの程度の期間をおいて支払うかを示すものであり、通常は日数で表されます。
Q2 代表的な支払いサイトは?
代表的な支払いサイトとして、「30日(月末締め翌月払い)」があります。こちらは、月末を締切日としてその月の取引代金をまとめて請求し、支払いは翌月末までに行われる取引を指します。
まとめ
日本では掛取引が一般的なので、支払いサイトについて理解しておくことはとても大切です。
支払いサイトは手元のキャッシュ量を左右する要因にもなるので、資金繰りが苦しくならない範囲で適切な期間を設定するようにしましょう。そうすることで、継続性の高いビジネス環境が構築できるはずです。
また、支払いサイトを長くしたい場合は、ビジネスカードの活用も検討しましょう。取引代金をビジネスカードで決済することで、実際の引き落としまでに猶予期間が生じ、支払いサイトが長くなります。
特におすすめのビジネスカードは、「セゾンコバルト・ビジネス・アメリカン・エキスプレス(R)・カード」と「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス(R)・カード」の2枚です。
ビジネスシーンで役立つ特典も豊富に付帯しているので、ぜひお申し込みをご検討ください。
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この記事を監修した人

【保有資格】
公認会計士、AFP、2級ファイナンシャルプランニング技能士、ライフオーガナイザー®









