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財務諸表分析のやり方を解説!企業の財務状況を正しく把握するための4つの分析方法
会社の収益性や成長性を向上させる手法として、多くの企業に利用されている財務諸表分析。この記事では、経営成績や財務状況の改善に役立つ財務諸表分析のやり方について解説していきます。
財務諸表分析はなぜ重要なのか
財務諸表分析とはその名のとおり、財務諸表のデータから企業の経営成績や財務状態を測ることをいいます。分析を行うことで、企業の「収益性」、「生産性」、「安全性」、「成長性」の4つの性質を知ることができます。
企業の内外には多くの利害関係者が存在し、企業の実態を知るために財務諸表分析を必要としています。たとえば、経営者や経理担当者は自社の財務状況を客観的に把握し、問題点を見つけて経営上の判断に役立てるために。銀行や投資家は、その企業に融資や投資をしてよいのか決めるために分析を行います。
財務諸表を細かく読み解くことで、企業がどのような業務で利益や損失を出しているのか、支払い能力がどれだけあり、倒産するリスクがどの程度あるのか、今後どのくらい成長する可能性があるのかといったことが見えてきます。それでは、分析のやり方について詳しく見ていきましょう。
財務諸表分析の4つの手法
財務諸表分析には、おもに以下の4つの種類があります。
1.収益性分析
2.生産性分析
3.安全性分析
4.成長性分析
分析を行う際は、企業のどの性質を調べるかによって上記4つの手法を使い分けます。それぞれどのような分析方法なのか、順番に見ていきましょう。
1.収益性分析
収益性分析とは、企業の利益を生み出す力を測るための方法です。収益性分析には、売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率などの指標が用いられます。
以下は、それぞれの指標の計算式と概要をまとめた一覧表です。
指標 | 計算式 | 概要 |
---|---|---|
売上高総利益率 | 売上総利益÷売上高 (※)売上総利益=売上高-売上原価 |
・粗利率ともいわれ、売上高に対する粗利益の割合を示す ・商品や製品の収益性を測る |
売上高営業利益率 | 営業利益÷売上高 (※)営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費 |
・本来の営業活動によって得た利益が、売上高に対してどのくらいの割合あるのかを示す ・企業の営業力を測る |
売上高経常利益率 | 経常利益÷売上高 (※)経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用 |
・売上高に対する経常利益の割合を示す ・本業で得た利益に、財務活動によって生じた損益を加味して収益性を測る |
これらの指標の数値が高い企業ほど、優れた収益性をもっていることになり、金融機関や投資家などから資金調達がしやすくなります。
各指標について、さらに詳しく解説していきます。
売上高総利益率
売上総利益とは、会社の主力となる商品やサービスで得た利益のことで、一般的には粗利(あらり)と呼ばれています。
売上総利益率は、売上高に対する売上総利益の比率を表したものです。数字が大きいほど、収益性の高い商品やサービスを提供できていることを示します。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合を知るための指標です。営業利益とは、企業が本業で稼いだ利益のことで、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引くことで算出することができます。
売上高営業利益率を見ることで、その企業が本業でどれほど稼いでいるかを知ることができます。
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を測るための指標です。経常利益とは、企業が本業で得た営業利益に、有価証券の売買などで生じた損益を反映した金額です。
売上高経常利益率は、商品力や営業力に加えて、財務活動なども含めた事業活動全体における利益率を示します。そのため、この数値が高いほど企業ほど、総合的な収益性が優れていると判断することができます。
2.生産性分析
生産性分析は、ヒト・モノ・カネといった経営資源の投入に対して、どのくらいの成果があったのかを測る手法です。生産性分析の代表的な指標としては、労働生産性が挙げられます。
労働生産性
労働生産性とは、労働者1人あたりが生み出す成果のことです。以下は、労働生産性を求める際に使用される計算式などをまとめた表です。
指標 | 計算式 | 概要 |
---|---|---|
労働生産性 | 付加価値÷従業員数 (※)付加価値=売上高-外部購入費用 |
・従業員1人につきどのくらいの利益が得られたのかを測る ・数値が高いほど効果的な人材活用ができている |
付加価値とは、売上高から原材料費や消耗品費などの「外部購入費用」を差し引いた金額です。
この労働生産性の数値が高い会社ほど、従業員を有効活用できていることになります。業務効率化や長時間労働に対する問題意識の高まりを受けて、近年はいかに労働生産性を上げられるかが企業にとっての課題となっています。
3.安全性分析
安全性分析とは、企業の支払い能力の高さから倒産リスクを評価する手法です。自己資本比率、流動比率、当座比率などの指標が使用されます。
指標 | 計算式 | 概要 |
---|---|---|
自己資本比率 | 自己資本(※)÷総資産 ※自己資本=純資産-新株予約権-非支配株主持分 |
・総資本に占める自己資本の割合を測る ・経営の安全性を判断するのが目的 |
流動比率 | 流動資産÷流動負債 | ・短期で支払いが訪れる流動負債に対する流動資産の保有率 ・短期の支払い能力を分析するのが目的 |
当座比率 | 当座資産÷流動負債 | ・現金、預金、受取手形、売掛金、有価証券などを含んだ当座資産から短期の支払い能力を分析する |
これらの指標の数値が極端に低い会社は、財務状態に大きな問題を抱えている可能性があります。また、安全性が低いことが原因で銀行からの融資が受けられなかったり、社債を発行しても売れなかったりする事態が生じ、さらに資金繰りが苦しくなるという悪循環に陥りやすくなります。
各指標について、もう少し詳しく見てみましょう。
自己資本比率
会社のすべての資本(総資本)のうち、返済不要の「自己資本」がどの程度あるのかを示す指標が「自己資本比率」です。数値が高いほど自己資本が潤沢にあることを示し、財務状態が良好である証となります。
いっぽう、自己資本比率が低い状態は債務超過と呼ばれ、借入金などの負債の割合が多く、厳しい財務状況に置かれていることを示します。
一般的に、自己資本比率が50%を超えている企業は財務状態が安定しており、10%を下回ると危険水域といわれています。安定した経営を継続するなら、少なくとも30%程度は維持しておくのが望ましいでしょう。
流動比率
企業の支払い能力を分析する代表的な指標が、「流動比率」です。
流動比率は、短期に現金化できる「流動資産」と短期に支払う必要のある「流動負債」の比率を見て、企業の安全性を判断するための指標です。数値が高いほど、短期的な支払い能力が高いことを意味します。
一般的に、流動比率は200%を超えていれば問題ないとされています。いっぽうで、100%を下回っている場合は短期の支払い能力が不足しており、資金繰りが厳しい状態であると判断できます。
当座比率
当座比率は、流動比率よりもさらに短期的な支払い能力を分析するための指標です。現金、預金、短期的に換金できる売掛金、有価証券などを含んだ当座資産と流動資産の比率を見て、企業の支払い能力を測定します。
当座比率に関しては、100%を超えているのが望ましいといわれています。
4.成長性分析
成長性分析は、売上高や総資産、従業員数などの変化から、企業がどれくらい成長しているのかを測る分析方法です。指標には、売上高増加率、経常利益増加率、従業員増加率などがあります。
指標 | 計算式 | 概要 |
---|---|---|
売上高増加率 | (当期売上高-前期売上高)÷前期売上高 | ・前期と比べてどれだけ売上高が伸びたのかを測る ・プラスなら成長、マイナスなら衰退を表す |
経常利益増加率 | (当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益 | ・前期に対して経常利益がどれだけ増加しているかを測る ・プラスなら収益力が向上していることを示す |
従業員増加率 | (当期従業員数-前期従業員数)÷前期従業員数 | 従業員の増減で成長性を測る |
続けて、3つの指標についてさらに詳しく解説していきます。
売上高増加率
前期と比べて、売上高がどれくらい伸びているのかを見るための指標が売上高増加率です。前期より数値が高い場合、その会社は順調に成長していることを意味し、低い場合は衰退していることを示します。
経常利益増加率
経常利益増加率は、前期と比べて経常利益がどのように変化しているのかを見るための指標です。数値が伸びている場合、財務活動などを含めた総合的な収益力がアップしていることを示します。
従業員増加率
従業員増加率は、従業員の増減によって企業の成長性を測る指標です。従業員増加率は、売上高増加率に比例して推移する傾向があります。売上高が増加すると事業の規模が拡大するので、それにともない従業員の数も増えるというのは当然といえるでしょう。
ただし、企業によっては設備投資に資金を投入するために人件費を削減しているケースもあるため、従業員増加率が低下したからといって必ず成長性も落ちていると断定することはできません。
このように、1つの指標だけでは企業の限られた面しか見えない場合があり、結果的に誤った判断をしてしまう可能性が高くなるので気をつけなくてはいけません。
今回は従業員増加率を例に挙げましたが、これはすべての指標に共通していえることです。財務諸表分析をする際は1つの指標に頼らずに、必ず複数の指標を併用するようにしましょう。
財務諸表分析の「実数分析」と「比率分析」とは
財務諸表分析には、「実数分析」と「比率分析」という2種類の計算方法があります。それぞれどのような内容なのか、順番に解説していきます。
実数分析
実数分析は、財務諸表に記載されている売上や経費などの数値(金額)をそのまま用いて計算する手法です。おもに、以下のような分析を行う際に使用されます。
・売上・利益増減分析
・原価差異分析
・経常収支分析
・キャッシュフロー分析
実数分析は、「量」に関する分析をするのに適しています。たとえば、売上高や販売数量の増減などは、実際の金額や個数を用いて計算する実数分析を行うことで、分析結果を感覚的に把握しやすくなります。
比率分析
比率分析は、財務諸表の数値をもとにさまざまな比率を求めて行う分析方法です。先ほどご紹介した4つの分析方法(収益性分析、生産性分析、安全性分析、成長性分析)は、この比率分析に該当します。
比率分析で使用する指標には、おもに以下のようなものがあります。
・売上高総利益率
・労働生産性
・自己資本比率
・従業員増加率
「量」の分析に適している実数分析に対して、比率分析は「質」の分析に向いています。比率をもとに分析することで、事業の収益性や安全性などの可視化できない要素を客観的に把握することができます。
財務諸表分析は経費精算サービスや会計ソフトがあると便利
財務諸表分析を行うには、まずもとのデータとなる財務諸表を作成しなくてはなりません。しかし、財務諸表には多数の項目があり、それぞれ異なる計算方法によって数値を出す必要があるため、経理や簿記の知識がない方がミスなく作成するのは難しいといわれています。
財務諸表の土台となる重要な数字の1つに経費がありますが、経費管理に時間を取られてしまうと、事業にあてるはずの時間が減ってしまうこともあるでしょう。そんなときは、クラウド型経費精算サービスを活用しましょう。
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さらに、クラウド会計ソフト「かんたんクラウド(MJS)」の利用料金が2ヵ月無料になる特典も付帯するので、お得に会計ソフトを利用したいという方にもおすすめです。
そもそも財務諸表とは
ここまで財務諸表分析のやり方について解説してきましたが、なかには「そもそも財務諸表がどういうものなのかわからない」という方もいらっしゃるかもしれません。
財務諸表とは、企業が株主や取引先などの利害関係者に対して、一定期間の財務状態や経営成績を報告するための書類です。また、経営者や社員が自社の財務状況を把握するために利用することもあります。
財務諸表は複数の書類から構成されており、とくに重要な「貸借対照表」、「損益計算書」、「キャッシュフロー計算書」を総称して「財務三表」と呼んでいます。財務三表からは、企業の資産の状況、収支の状況、お金の流れの3つを知ることができます。
ここまで解説してきた財務諸表分析は、この財務三表のデータを組み合わせることで行います。
財務諸表分析のまとめ
財務諸表分析は、企業の収益性、生産性、安全性、成長性を測るための手法です。企業は財務諸表分析をすることで、収支やお金の流れなどの現状が把握でき、その結果を経営改善に生かすことができます。
分析を行うには、まずもとのデータとなる財務諸表を作成しなくてはいけません。経理や簿記の知識がない方は、クラウド型経費精算サービスや会計ソフトを使用すると手軽に書類が作成できるのでおすすめです。
今回ご紹介した2枚のビジネスカードは、クラウド型経費精算サービスや会計ソフトを優待価格で利用できる特典が付帯するほか、経費削減につながるさまざまなサービスを受けることができます。「クラウド型経費精算サービスや会計ソフトをお得に利用したい」、「経理の管理や削減に役立つクレジットカードがほしい」という方は、ぜひ入会をご検討ください。
この記事を監修した人
【保有資格】
CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、公認会計士、税理士