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電子帳簿保存法とは?2023年改正後の対象書類や適用要件について解説

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電子帳簿保存法とは?2023年改正後の対象書類や適用要件について解説
かつて商取引に関する書類は紙媒体での保存が義務付けられていましたが、現在は電子帳簿保存法により電子データでの保存が認められています。電子帳簿保存法の要件はこれまで何度か見直され、最近では2023年度にも法改正が行われました。

本記事では、電子帳簿保存法の概要や認められている保存方法、電子帳簿保存をするメリットなどを紹介します。2023年の改正によって変更された適用要件も解説しているので、ぜひ参考にしてください。

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、各税法で保存が義務付けられている帳簿書類を電子データとして保存することを認める法律です。

かつて仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿書類は紙媒体での保存が必要でしたが、紙媒体では管理に手間がかかってしまうため、帳簿書類の電子保存の容認を求める声が増えてきました。

こうした要望に応えるために創設されたのが、電子帳簿保存法です。電子帳簿保存法の登場により、これまで紙媒体で保存していた帳簿書類を電子保存できるようになりました。

さらに、電子保存をする時のルールも電子帳簿保存法で決められています。保存方法は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つの区分にわかれており、それぞれ保存に関するルールが設けられています。

なお、帳簿書類の電子保存が認められているのは、帳簿書類を保存しているすべての個人事業主・法人です。また、取引の際に請求書や契約書などの電子データをやりとりした場合には、対象のデータを電子保存しなければならないと定められています。

電子帳簿保存法で認められている保存方法

電子帳簿保存法で認められている保存方法は次の2つです。

・電磁的記録による保存…サーバーやDVD、CDに保存
・COMによる保存…電子計算機出力マイクロフィルムに保存

電子データで作成した書類は、電子データのままサーバーやDVD・CDに保存できます。

また、紙の書類はスキャナで電子データに変換すれば、同じようにサーバーやDVDなどに保存が可能です。以前は電子署名が必要でしたが、法改正により現在は不要になり、スマートフォンで撮影した画像データでも保存できます。

次に、パソコンで作成した書類をCOMによって保存する方法も認められています。COMとは、電子計算機出力マイクロフィルムのことで、書類を写真のフィルムの形で保存できる方法です。

両方とも法律で認められていますが、保存のしやすさでは電磁的記録による保存、品質や耐久性の高さはCOMによる保存の方が優れています。自社に合った保存方法を選びましょう。

電子帳簿保存法の対象書類

電子帳簿保存法で電子保存が認められている対象書類は、各税法で保存が義務付けられている帳簿や国税関係書類です。具体的な対象書類は、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」の区分で異なります。

以下では各区分の対象書類を順番に紹介します。

電子帳簿等保存

電子帳簿等保存とは、電子的に作成した帳簿や書類をそのままデータとして保存する方法のことです。電子帳簿等保存では、下記書類のデータ保存が認められています。

対象書類 具体例
コンピュータを用いて作成した帳簿 ・仕訳帳
・経費帳
・売上帳
・仕入帳など
コンピュータを用いて作成した決算関係書類 ・損益計算書
・賃借対照表など
コンピュータを用いて作成した取引相手に交付する書類の写し ・見積書
・請求書
・納品書
・領収書など

スキャナ保存

スキャナ保存はもともと紙媒体だった書類をスキャナでデータに変換し、電子保存する方法を指します。ここでは、スキャナ保存の対象書類を紹介します。

対象書類 具体例
取引相手から受け取った書類 ・契約書
・見積書
・注文書
・納品書
・請求書
・領収書など
自分で作成し、取引相手に交付した書類の写し

なお、取引に必要な書類を最初から電子形式でやりとりしている場合でも、対象の電子データは保存しなければならないことは覚えておきましょう。例としては、メールで送受信した請求書や契約書、インターネットからダウンロードした領収書などが挙げられます。

電子帳簿等保存とスキャナ保存の適用要件

電子帳簿等保存でデータを保存するには、電子帳簿保存法によって定められている適用要件を満たしている必要があります。

具体的な適用要件は帳簿と書類でやや異なるので、混同しないようにしましょう。また、帳簿は「優良帳簿」と「その他の帳簿」にわけられており、優良帳簿とみなされた場合は過少申告加算税の軽減措置や所得税の青色申告特別控除の適用を受けられます。

電子帳簿等保存の適用要件は下記のとおりです。


要件 その他の帳簿 優良帳簿 書類
記録事項の訂正や削除を行った場合は、これらの事実や内容を確認できる電子計算機処理システムを使用すること - -
通常の業務処理期間を経過したあとに入力を行った場合は、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使用すること - -
電子化した帳簿の記録事項と、その帳簿に関連するほかの帳簿の記録事項の間において、相互に関連性を確認できること - -
システムの概要書や説明書などシステム関係書類を備え付けること
保存場所に電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンター及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること
取引年月日や取引金額、取引先により検索できること - -
日付や金額の指定範囲により検索できること - -
2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件で検索できること - -
税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じられるようにすること(優良帳簿の要件をすべて満たしている場合は不要) -

適用要件は、スキャナ保存にも定められているので確認しておきましょう。スキャナ保存の区分は資金の流れに直結・連動する「重要書類」、資金の流れに直結・連動しない「一般書類」にわけられており、それぞれ必要な要件が異なります。

スキャナ保存の適用要件は下記のとおりです。

要件 重要書類 一般書類
書類の受領等後又は業務の処理に係る通常の期間を経過したあと、速やかに入力 -
一定水準以上の解像度(200dpi以上)による読み取り
カラー画像による読み取り(赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上) (※)
タイムスタンプの付与
解像度及び解像度及び階調情報の保存
大きさ情報の保存 -
ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認)
入力者等の確認
適正事務処理要件 -
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持
見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識など)の備え付け (※)
整然・明瞭出力
電子計算機処理システムの開発関係書類などの備え付け
検索機能の確保
税務署長の承認

(※)一般書類の場合は、カラー画像ではなくグレースケールでの保存が可能

2023年改正によって変更された適用要件

記事冒頭で紹介したように、電子帳簿保存法の要件はこれまで何度か内容が見直されています。

電子帳簿保存法は2023年度にも見直しが行われ、全体的に要件が緩和される方向に法改正されました。主な改正事項は下記のとおりです。


区分 主な改正事項
電子帳簿等保存 ・過少申告加算税の軽減措置の対象となる帳簿の範囲を限定化
スキャナ保存 ・スキャナ保存をする際の解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要に
・スキャナ保存をする際の入力者等の確認が不要に
・帳簿との相互関連性の確保が必要な書類が重要書類に限定されるように
電子取引データ保存 ・検索機能が不要とされる対象者の範囲が拡大
・宥恕措置は、2023年12月31日の適用期限をもって廃止
・一定の要件を満たす場合、改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となる

なお、改正事項の内容は国税庁の公式サイトからも確認できます。

電子帳簿保存をするメリット

電子帳簿保存をするメリット

ここからは、電子帳簿保存をするメリットを紹介します。電子帳簿保存をしようか悩んでいる方は、メリットに目を向けてみましょう。

ペーパーレス化による管理コスト・工数の軽減

電子帳簿保存を実行すると、紙に印刷していた書類がペーパーレスになります。紙で保存すると収納スペースがとられてしまい、印刷の手間もかかりますが、ペーパーレス化すれば管理コスト・工数軽減につながります。

例えば、個人の確定申告の書類の場合は白色申告であれば5年、青色申告であれば7年の保存義務があります。7年分の確定申告書類・領収書・契約書などを保存するとなると、管理に手間がかかります。

電子帳簿保存を利用すれば、ペーパーレス化を進め管理コスト・工数を下げられます。さらにビジネスカードを利用すれば取引記録がすぐに確認できるので領収書の保存が不要になり、確定申告に関わる書類をペーパーレスで保存できるようになります。

こうした仕組みをうまく活用すれば、管理にかかるコストを下げて本業に時間を割けるようになります。

紛失・焼失のリスクを回避できる

紙媒体で書類を保存していると、紛失・焼失のリスクもあります。紙媒体では万一の事態に対応できません。また、書類を電子化するときには、必ずバックアップをとっておきましょう。バックアップがあれば万一の事態にも備えられるので安心です。

書類を探すのにデータ検索が活用できる

過去の書類を探す必要が生じた場合、紙媒体であれば段ボールに入った大量の書類から必要な書類を探し出す労力がかかっていました。しかし、電子データで保存しておけば、必要な書類をデータ検索で容易に探し出すことが可能となります。また、在宅勤務などの勤務形態にも対応できます。

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まとめ

かつては決算関係書類や領収書の紙媒体での保存が義務付けられていましたが、電子帳簿保存法の制定・緩和により、電子帳簿保存の流れが進んでいます。電子帳簿保存を利用すれば、管理コストを大幅に下げられます。

また、2023年度に行われた法改正により、電子帳簿保存がさらに利用しやすくなりました。

紙に比べて手軽に保存できるのはもちろん、業務工程も大幅に削減できるので、紙媒体で書類を管理している方はこの機会に電子帳簿保存を検討すると良いでしょう。
電子帳簿保存を進めるのであれば、あわせてビジネスカードの発行をおすすめします。取引の決済をビジネスカードに一元化して、そのデータをクラウド型会計ソフトに反映すれば、確定申告や経費決済の手間を大幅に減らすことができます。

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この記事を監修した人

松浦 絢子
松浦 絢子
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法科大学院出身。企業法務系の法律事務所のパラリーガル(法律事務補助)として主にIT業界を担当した後、ロースクールに進学しました。弁護士資格取得後は法律事務所や不動産会社の法務部門に所属した経験もあります。法律事務所に在籍していた頃はちょうど東日本大震災後の不景気で、個人や事業者の方から銀行や消費者金融からの借金、クレジットカード利用に関するご相談を多くお受けする機会がありました。不動産会社の法務部に転じてからは、不動産購入時のローンや機関投資家の不動産投資におけるファイナンスに携わっていたため金融の仕組みについては人一倍興味があります。現在、不動産やIT分野を中心として、トラブル対応・新規事業に関する適法性検討・契約交渉に関するご相談などに取り組んでいます。その他、借金や資金繰りにお困りの個人や事業者の方からのご相談もお受けしております。休みの日は、たいてい近所の大きな公園で子供と遊んでいます。

【保有資格】
弁護士、宅地建物取引士