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給与所得とは?所得税の控除や所得金額調整控除、計算方法、書類を紹介

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給与収入と給与所得は意味が異なり、会社から給与をもらっている方であれば知っておきたい内容です。

しかし、給与の支給がない個人事業主のなかには、その違いを把握していない方もいるのではないでしょうか。

個人事業主の方でも「将来的に従業員を雇って給与を支払いたい」または、「すでに従業員を雇っているが、給与を支払う側として念のため再確認したい」と考えている方もいると思います。

本記事では、収入と所得の違いや給与所得の意味を解説します。あわせて、所得税を計算する際に受けられる所得控除についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

そもそも「収入」と「所得」の違いとは?

仕事を通じて得た金銭を表すときには「収入」や「所得」という言葉が使われますが、税制上ではそれぞれ意味が異なります。

● 収入:お店の売上や会社からもらう給与・賞与など
● 所得:収入から必要経費(給与をもらっている方は給与所得控除額)を差し引いたもの

個人が支払う代表的な税金には所得税や住民税がありますが、いずれも収入ではなく「所得」にかかる税金です。

給与所得とは

給与所得とは、会社から支給された給与や賞与などの収入から、給与所得控除額を引いた金額です。

給与所得 = 収入金額(源泉徴収前の金額) – 給与所得控除額

個人事業主やフリーランスの場合は、収入から必要経費を差し引いた金額が所得になります。一方、会社から給与をもらっている方は、一般的に必要経費が認められていないため、代わりに給与所得控除が設けられています。

また、給与所得者が一定の要件を満たす特定支出をした場合、確定申告により規定の金額を給与所得控除後の金額から差し引くことが可能です。これを「給与所得者の特定支出控除」といいます。

給与所得控除

前述のとおり、給与所得控除は給与所得者にとって必要経費とみなされる制度です。給与所得控除額は、1年間の給与や賞与などの収入金額の合計によって決まっており、以下のように算出されます。

収入金額 給与所得控除額
162万5,000円以下 55万円
(※2025年12月1日より65万円に引き上げ)
162万5,000円超~180万円以下 収入金額 × 40% - 10万円
180万円超~360万円以下 収入金額 × 30% + 8万円
360万円超~660万円以下 収入金額 × 20% + 44万円
660万円超~850万円以下 収入金額 × 10% + 110万円
850万円超 195万円(上限)

例えば、給与や賞与などで1年間の収入金額が300万円の方は「300万円 × 0.3 + 8万円」となり、給与所得控除額は98万円です。

なお、令和7年分以後、給与所得控除の最低保証額が55万円から65万円に引き上げられます。

11月30日までの源泉徴収事務には変更はありませんが、12月以後は変更が生じるため、年末調整の対応時には注意しましょう。

特定支出控除

特定支出控除は、給与所得者が以下の特定支出をした場合に受けられる可能性がある制度です。

● 通勤費
● 職務上の旅費
● 転居費
● 研修費
● 資格取得費
● 単身赴任者の帰宅旅費
● 勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費など)

その年の特定支出の合計額が「適用判定の基準額」を超える場合は、確定申告によって超過分を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができます。

特定支出控除額の適用判定の基準となる金額は、その年の給与所得控除額の2分の1です。

例えば、給与収入が300万円の方が転勤により引っ越し費用として100万円かかった場合、「98万円(給与所得控除額) ÷ 2」で求めた49万円を超える「51万円」を、特定支出控除として確定申告により差し引くことができます。

なお、特定支出控除を受けるためには確定申告が必要であり、申告書と一緒に必要な書類を提出しなければいけないため注意しましょう。

アルバイトやパートのボーダーラインは「103万円」から「123万円」へ変更

アルバイトやパートの方のなかには、「103万円の壁」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。この「103万円」は、所得税がかからない年間の給与収入金額を指しています。

アルバイトやパートでの給与収入が103万円以下であれば、所得税はかかりません。

なお、所得税の計算は「((収入 – 必要経費) – 所得控除) × 所得税率」です。 所得控除のひとつには誰もが受けられる「基礎控除」が設けられており、納税者本人の所得が2,400万円以下であれば、48万円が一律で控除されます。

つまり、給与所得者の場合は「(給与収入 – 給与所得控除) – 所得控除=課税所得」となるため、給与収入金額が103万円以下の方は「103万円 – 55万円(給与所得控除) – 48万円(基礎控除)=0円」となり、所得税がかかりません。

ただし、令和7年分以後、給与所得控除は65万円に、基礎控除は58万円に引き上げられるため、課税対象となる給与収入の上限が123万円に変更されます。

さらに、給与収入が200万円以下の場合、基礎控除に特例が適用されて37万円上乗せされ、最大95万円まで控除されるため、給与所得控除65万円と合わせて、合計で160万円まで課税所得が0になる計算です。

160万円(給与収入) - 65万円(給与所得控除) - 58万円(基礎控除) - 37万円(基礎控除の上乗せ) = 0円

2025年からは、パートやアルバイトでもより多くの収入を得やすくなるよう、上限が引き上げられる制度改正が予定されています。

なお、給与所得控除と所得控除は全く異なる制度のため、混同しないように注意しましょう。

所得税の計算で重要な「所得控除」とは

所得税の計算で重要な「所得控除」とは

前述のとおり、所得税は、所得金額から所得控除額を引いた課税所得に応じた税率をかけて算出されます。所得控除には、誰もが受けられる基礎控除のほか、状況に応じて適用される以下のような控除もあります。

● 医療費控除
● 社会保険料控除
● 生命保険料控除
● 寄附金控除
● 配偶者控除
● 扶養控除
●特定親族特別控除

それぞれの所得控除について解説します。なお、上記以外にも、雑損控除や寡婦控除などもあるため、詳しくは国税庁の公式サイトをご確認ください。

医療費控除

医療費控除は、生計をともにする配偶者やほかの親族を含め、一定額以上の医療費を負担した場合に適用されます。

控除額の計算方法は「(支払った医療費 - 保険金などで補填される金額) - 10万円」です。なお、その年の所得金額が200万円未満の場合は「所得金額 × 5%」で算出されます。

社会保険料控除

社会保険料控除は、医療費控除と同様に、配偶者やその親族を含めた国民年金保険料や健康保険料、介護保険料などの社会保険料を支払った場合に適用されます。控除額は支払った保険料の合計額です。

生命保険料控除

生命保険料控除は、生命保険や個人年金保険、介護医療保険の保険料を支払っている場合に適用されます。複数の保険に加入している方は、所定の計算式に基づいて算出された合計が控除額となり、上限は12万円です。

なお、政府では、23歳未満の扶養親族がいる納税者に対して、「一般生命保険料控除」の限度額を現行の4万円から6万円に引き上げる方針を検討しています。

ただし、引き上げが実現した場合でも、生命保険料控除全体の上限額である12万円に変更はありません。

現時点では正式に決定されていませんが、所得控除に影響を与える可能性があるため、最新の税制を確認しましょう。

寄附金控除

寄附金控除は、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して「特定寄附金」を支出した場合に適用されます。

ふるさと納税で税金の控除を受けられると聞いたことがある方も多いと思いますが、寄附金控除に該当します。

寄附金控除額は、以下のいずれか低い金額から2,000円を差し引いた金額です。

● その年に支出した特定寄附金の合計額
● その年の総所得金額等の40%相当額

配偶者控除

配偶者控除は、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に適用されます。控除対象配偶者となるのは、以下の要件をすべて満たした方です。

● 民法の規定による配偶者(内縁関係は該当しない)
● 納税者と生計を一緒にしている
● 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

配偶者控除額は、一般の控除対象配偶者であれば最高38万円、老人控除対象配偶者(12月31日時点で年齢が70歳以上の方)であれば最高48万円です。

なお、令和7年分以後は、年間の合計所得金額が「48万円以下」から「58万円以下」に引き上げられます。

控除額は変更されませんが、要件の緩和により、これまで扶養の範囲を超えていた方も新たに配偶者控除の対象となる可能性があるため、年末調整の際に確認しましょう。

扶養控除

扶養控除は、納税者本人に12月31日時点で16歳以上の扶養親族がいる場合に適用されます。扶養親族となるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

● 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)または、里子や市町村長から養護を委託された老人であること
● 納税者と生計を一にしている
● 年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
● 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと

扶養控除額は以下のとおりです。

● 一般の控除対象扶養親族:38万円
● 特定扶養親族:63万円
● 老人扶養親族:58万円

特定親族特別控除

2025年度の税制改正により、「特定親族特別控除」が新たに創設されました。

従来は、大学生の子どもがアルバイトで所得金額48万円を超える(給与収入額103万円を超える)と、扶養控除の対象から外れ、親の所得税負担が増えることがありました。

そのため、親の扶養から外れないよう、就業時間や収入を抑えるケースも少なくありませんでした。

特定親族特別控除では、19歳以上23歳未満の扶養親族がアルバイトによって一定金額以上の所得を得た場合でも、親が段階的に扶養控除を受けることができます。

以下の表は、19歳以上23歳未満の扶養親族の合計所得金額と特定親族特別控除額をまとめたものです。

特定親族の合計所得金額
(給与収入額)
特定親族特別控除額
58万円超 85万円以下 (123万円超 150万円以下) 63万円
85万円超 90万円以下 (150万円超 155万円以下) 61万円
90万円超 95万円以下 (155万円超 160万円以下) 51万円
95万円超 100万円以下 (160万円超 165万円以下) 41万円
100万円超 105万円以下 (165万円超 170万円以下) 31万円
105万円超 110万円以下 (170万円超 175万円以下) 21万円
110万円超 115万円以下 (175万円超 180万円以下) 11万円
115万円超 120万円以下 (180万円超 185万円以下) 6万円
120万円超 123万円以下 (185万円超 188万円以下) 3万円

大学生の子どもが年150万円の給与収入を得ていたとしても、親は63万円の控除を受けることができます。

特定親族特別控除は令和7年分以後より適用されるため、19歳以上23歳未満の子どもがいる従業員に対しては、子どもの年収を確認するように依頼しましょう。

「所得金額調整控除」とは?

所得金額調整控除とは、2020年の税制改革で新たに設けられた制度で、特定の条件に該当する給与所得者の課税所得を軽減するための控除です。

従来の所得控除をすべて差し引いたあとの課税所得金額から、さらに差し引かれる控除である点がポイントです。

所得金額調整控除には、以下の2種類があります。

● 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除
● 給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

以下でそれぞれ紹介します。

子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除

「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」は、給与収入金額が850万円を超える給与所得者で、以下の要件のいずれかに該当する方に適用されます。

● 本人が特別障害者に該当
● 年齢23歳未満の扶養親族を有する
● 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する

控除額は「(収入金額 – 850万円) × 10%」で算出されますが、控除対象となる収入金額については1,000万円が上限です。

なお、扶養控除は同一生計内のいずれか一方に適用されますが、こちらの控除には扶養控除のような制限がありません。

例えば、夫婦ともに給与収入金額が850万円を超えている場合でも、上記の条件に該当すれば両方が控除の対象になります。

給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」は、給与所得金額と公的年金等に係る雑所得の金額の両方を有しており、合計額が10万円を超える方に適用されます。

控除額は「(給与所得控除後の給与等の金額 + 公的年金等に係る雑所得の金額) – 10万円」です。「給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額」は、どちらも10万円超の場合に10万円として計算します。

給与所得の計算方法

給与所得の計算式は次のとおりです。

給与所得 = 給与収入 - 給与所得控除

給与所得控除の金額は、収入額に応じて段階的に決まっており、給与収入が660万円超~850万円以下の場合は、「収入金額 × 10% + 110万円」が給与所得控除となります。

例えば、年収が800万円の場合、給与所得の計算式は以下のとおりです。

800万円 - (800万円 × 10% + 110万円) = 610万円

上記の給与所得から、さらに基礎控除や配偶者控除などを差し引いて残った金額が課税所得となり、所得税を求めます。

なお、控除額や計算方法は税制改正で変わる可能性があるため、毎年、国税庁の最新情報を確認しましょう。

給与所得に関する書類

以下の表は、給与所得に関する書類をまとめたものです。

書類名 概要
給与所得者の基礎控除申告書 基礎控除を適用するための書類
従業員が会社に提出する
給与所得者の異動届出書 従業員が退職・転勤・休職などで、給与支払者や支払事務所が変わる際に税務署へ提出する
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 配偶者控除や扶養控除を受けるための書類
控除対象親族の変更がある場合は再提出が必要になる

税額の正確な算出と控除の適用に必要な書類のため、記入漏れや誤記がある場合、税務上の不利益が生じる可能性があります。

なお、書類の様式や詳細は、国税庁のウェブサイトから確認またはダウンロードが可能です。最新の書類を準備しましょう。

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まとめ

給与所得は、支給された給与や賞与から、給与所得控除額を引いた金額です。

給与所得者を含めて一定以上の所得がある方は所得税を納めなくてはいけませんが、給与所得者の所得税は、給与所得を基に算出されるため、給与をもらっている方は意味をしっかりと理解しておきましょう。

さらに、将来的に給与を支払う側になる予定のある個人事業主の方は、給与所得者の所得税についても理解を深めておくと良いかもしれません。

また、税制改正によって新しい控除や控除額の引き上げが発生するため、従業員を雇用している個人事業主の方は最新の税制を確認し、年末調整や手続きをスムーズに進められるように準備しておきましょう。

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